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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第六部 “和国・北洲の戦い”編②
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【第六部】第二十九章 護符の流出問題

――富央城・本丸・仮設指令所――



「それでは会議を始めましょう。――椿。法明」

「はっ!」

「承知しました」


 定刻となり、予定通り会議が始まる。イワナガヒメに指名され、椿と法明が前に出た。


「昨夜の報告会に出席していない者もいるから簡単に説明するが、敵の神獣の中に、我々と同じ護符を使うものが紛れていた」


 開口一番、法明が重大事案を持ち上げる。知っている者が多かったのか動揺による騒ぎはそれ程大きくはない。神楽達も初耳で驚きはしたが、まずは最後まで聞こうと黙っておく。


(なるほどな……。深刻そうに話してたのはこのためか)


 敵に自分達の内部情報が漏れていたということだ。まさかとは思うが、裏切り者がいる可能性だって捨てきれないだろう。


(情報を公開したのは、二次被害を恐れてか?)


「残った死体からの調査でわかったことは、護符を所持していたのは狸の神獣だけということだ。その数は多くはない。また、同種族で隊を構成してはおらず、城内の各所に散らばっていた」

「牛頭配下の構成は、牛や小鬼が多くを占めていた。それは、実際に交戦したお前達も知るところだろう?」


 椿が法明のフォローに回る。諸将もその通りだと頷くものは多かった。


「まだ推測の域は出ないが、外部勢力が紛れ込んでいたのではないかと推測している」

「女型の鬼は、確か狸の一族を従えていたはずだ。もしかしたら別勢力かもしれないが、警戒しておくに越したことはないだろう」


 二人はそこまで話すと、情報をかみくだいて理解させる時間を皆に与えるため若干の間を置く。


 そう間も無くして、陰陽師の一人から手が上がった。


「護符の使用には呪文が必要です。何らかの手段でその情報を得たということになりませんか? 護符はどのような種類だったのですか?」

「どの死体も共通して所持していたのは<護符通信>用のモノだな。後は、攻撃や阻害用が種類はバラバラに数枚ずつと言ったところだ」


 法明は淡々と応えるが、諸将の動揺は大きい。


「では、もしかしたら、城外の者と連絡を取るために護符を所持していた可能性も――」

「あるだろうな」

「い、今も紛れ込んでいる可能性はあるのではないですか!? 奴ら狸は“化ける”のを得意とします。まだ城内のどこかで人に化けて隠れていないとも――」

「言い切れないな。そこは今、“別の者達”に調査させているところだが、この情報を公開したのは、それをお前達に注意喚起するためでもある。――奪還戦時、攻撃性の護符を使われこちらにも被害は出ている。十分に注意は必要だ」


 場のザワツキはとめどなく大きくなっていく。


「一大事ではありませんか!?」

「そうだ。だが、出来る限りのことをする他無い。――神楽」

「ん?」


 急に法明に話を振られ、神楽は反射で返事をする。皆の注目が神楽に集まった。


「後で捕虜からも話を聞きたい。お前がいると心強い。すまないが、付いてきて欲しい」

「あ~……。確かに、あいつらの方が知ってるだろうな。わかった」


 神楽は快く了承を返すが、妖獣の捕虜に未だ抵抗を感じている諸将は嫌悪感を隠し切れず、神楽を睨み付ける者は多かった。


 大事な城を汚され金品を根こそぎ持ち出されていたのも妖獣への悪感情に拍車をかけたのだろう。


 その気持ちは分からなくもないので、神楽としても無用な争いを避けるため特に口は出さないでおく。


 護符についての話題はここで一段落した。次の議題に移る。



「では、次に今回の会議の主題――南の日城奪還作戦について……と、本来なら行きたいところだが、やっかいな問題が起きた。皆、心して聞いて欲しい」


 椿は苦虫をかみ潰したような表情で不機嫌さを隠さずに言う。



「今朝方、馬頭(メズ)が群れを率いて西の後城を出立したとの報告が入った。その進軍経路から推測するに、目的はまず間違いなくこの城の奪取だろう」


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