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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第六部 “和国・北洲の戦い”編②
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【第六部】第二十七章 動向推測③

――和国・北州・日城・天守閣――



「諜報員を潜り込ませるのは難しい。けれど、敵の内情は知りたい。――茶々。こんな時、あなたならどうする?」

「そうですね……。先遣部隊を編成し、一当たりしてみるとかですかね?」

「そうね。それもそう悪くはないわ。でもねぇ~……。下手したら藪から蛇以上のモノが出てきて思わぬ打撃を受けるかもだし、それをきっかけに開戦したら、こちらも全面的に応戦しないといけなくなるわ。正直面倒だわ。――私はね? 茶々。安全な場所で静かに暮らしたいだけなのよ」


『嘘だぁ~……?』という疑念を隠そうともせず、茶々はジト目で鈴鹿御前を見つめる。


 鈴鹿御前としては嘘を言っているつもりはない。四年前の事件を発端に、本州では妖獣が人間を排逐し、妖獣間で勢力争いに近いことをどこでもかしこでもしている。


 北州に来たのは、そんなわずらわしさから逃れるためだ。北州は人間がなだれ込み、妖獣の影響力はほとんど無かった。


 そんな中、自分の根城を持って後はゆっくり生きられたらよかったのだ。実際、日城を奪った後は進んで人間にちょっかいを出してはいない。――富央城の襲撃だけ、金品に目がくらみ牛頭や馬頭に加担したが。



「とにかくそうなの! ――それに、手駒を無駄に減らしたくはないしね。次の鬼月でどんな奴が来るかわからないし、下手したらこちらにちょっかいをかけてくるかもしれないわ」

「鈴鹿様に敵う者などそうそういないかと」

「わからないわよ? 流石に無いと思いたいけど、三大妖怪――大嶽丸は本州に根付いてるけど、あの“風来坊”は動きが読めないもの」


 鈴鹿御前の言う風来坊とは“酒呑童子”に他ならない。酒呑童子は強大な力を持つにも関わらず、他と群れない。


 配下を持とうとせず、いつもふらふらとどこかに現れては消える。まさに神出鬼没だった。


 酒呑童子にちょっかいを出した力自慢はことごとくが返り討ちにあい、今や、酒天童子が現れたらそのままいなくなってもらうのを息を潜めて待つものばかり。――言わば、天災のようなものだった。鬼だから鬼災とでも言うべきか。


 その目的も不明であり、鈴鹿御前が警戒している者達の中でも五本の指に入る。



「それは確かに……そうですね。その場合、鈴鹿様はどうなさるおつもりで?」

「この城を捨て、大橋を通り本州に帰るわ。金品を持ってね。――他人事みたいに言ってるけど、あなた達も来るのよ?」

「もちろんです。何があっても生涯お供します」


 茶々が嬉しそうに笑う。当たり前だと。鈴鹿御前は少し気恥ずかしくなり、そっぽを向いて話を本題に戻す。


「とにかく! そんな訳だから、私達は敵にぶつかりたくないの。――そうね……。茶々、西にも手の者は紛れ込ませてるでしょ? 馬頭を動かせない?」

「その手がありましたか。血の気が多いですし、頭は空っぽ――とにかく、動かせると思います。すぐに情報を流布させます」

「ええ、お願いね? それと、一応うちも軍備を整えておいて。敵が先に攻めてこないとも限らないから」


「承知しました」と答え、茶々は立ち上がるとイソイソと部屋を出る。一人残された部屋の中、鈴鹿御前は窓の外の月を見て独り言ちる。


「忙しくなりそうね……。やだわぁ」


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