【第六部】第二十二章 黄昏の世界にて②
――黄昏の世界――
「大変だったんだね……」
「和国での人間と妖獣の憎しみ合いは凄まじいんだ。戦争してるから当たり前っちゃ当たり前だけど。……でも、お互いに滅ぼし合うまで戦うのは違うと思うんだ」
今日の出来事――富央城での戦いと捕虜収容所での出来事を神楽はソフィアに話して聞かせた。
あまり戦争の生々しい話を聞かせるべきではないと神楽としては思うが、ソフィアが聞きたがるのだ。
「疲れてるのに、来てくれてありがとう。――ごめんね?」
「いや、今日は先に仮眠を取ってたし、そんなじゃない。話を聞いてもらえて少し楽になったしな」
青姫に叱られた話はしていない。なんとなく、情けない姿を見せたくなかったのだ。神楽、男の見栄だった。
それに、捕虜収容所での出来事は、覚悟はしていたとは言え、やはり衝撃的だった。モヤモヤしたものを誰かに吐き出したいとは思っていたのだ。
「でも、最後は少し歩み寄れたんでしょ?」
「ほんのわずかにだけどな。でも、可能性は感じたな。仲良くなれる可能性はやっぱりあるんだよ」
「皆がそうなれたらいいんだけどね……」
ソフィアの言う通りだと神楽はうなずく。
「その捕虜の人達、中つ国に受け入れを断られたら、本州に送るんだっけ?」
「反感強い和国民の手前そうは言ったけど、中つ国との交渉を簡単には諦めないし、本州に逃がすにしても、無責任に放り出したりはしないよ。――その場合は、ソフィアを助けに行くのがまた遅くなるな……」
「いいよ。カグラの気の済むまでやって? あたしのことは、心残りが無くなったらでいいから」
自分に捕虜の扱いを任せるよう和国民に言った手前、中途半端は出来ない。悩ましい問題だが、神楽としても必ず解決させるつもりだった。
「さて、と……じゃあ、そろそろ戻るかな」
「うん。ゆっくり休んでね」
「そっちもな。――って、いつもゆっくりしてるか」
「もう!」
そんなじゃれあいをしつつ、神楽はソフィアと別れをかわす。そして、意識を向こうの肉体に向け戻るのだった。




