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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第六部 “和国・北洲の戦い”編②
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【第六部】第二十章 富央城奪還戦後報告会⑤

――富央城・本丸・仮設指令所――



「……ん? ただの護符ではないか」

「それがどうかしたのか?」


 陰陽師の将は皆に見えるよう、その護符をかかげて見せる。顔は真剣そのものだった。


「はい。ただの護符です。ただし、敵――()()()使()()()()()護符です」


 その発言に一瞬、沈黙が降りる。だが、直ぐ様ヒートアップした。


「どういうことだ? 敵に護符を奪われたのか?」

「いや、使用には“呪文”が必要だ。誰かが入れ知恵をしなければ使えん」

「我が軍に裏切り者がいるとでもいうつもりか!?」


 諸将の混乱はもっともだろう。今までこんなことはなかった。



「お静かに! ――まずは、状況報告を聞きましょう」

「どのような神獣が使ったのだ?」


 騒がしい場をイワナガヒメがおさめ、法明がその将に状況を尋ねる。


「人化していたため名言はできませんが、耳などの外見的特徴から(たぬき)の神獣ではないかと」

「ふむ……狸か。捕虜の中にはいなさそうだったが……他に、狸と交戦した部隊はいるか?」


 ここには諸将全てが集っている訳ではない。精々が二十人程だ。他の者達のほとんどは、城の復旧指揮などに当たっていた。


 そんな二十人程度の諸将のうち、法明の問いに手を上げたのは二名。


「交戦はしましたが、数は一体でした。こちらも神獣でしたが、護符の使用はありませんでした」

「こちらも同じです」


 数はそれ程でもないようだ。


(しかし、狸だけで部隊を形成せず、バラけているというのが気にかかるな……)


 報告を受け考え込む法明だが、別の陰陽師の将から疑問の声が上がる。


「始末したのであろう? 死体に護符は無かったのか?」

「はい。着物の内側に三枚程護符を確認しました。今、隊の者が検分に当たってます」

「こちらは、特にあらためはせず他の妖獣と同じく処理を……」

「何分、妖獣の死体は数が膨大ですので。それに、妖獣が護符を持っているなど初耳でしたので……」


 護符を発見し報告している将以外は、死体をあらためずに処理――焼却処分してしまったようだ。


 法明はため息を隠せない。


「まだ処理していない神獣の死体があれば、急ぎあらためさせろ。狸かどうかは問わずだ。全隊に指示を出せ」

「――は、はっ!!」

「はっ!」

「ただちに!」


 法明の指示を受け、陰陽師、侍関わらず、慌ただしく動き出す。もう会議どころではなくなっていた。


「法明……」

「心配はご無用です姫様。まずは、敵にどれだけ我々の力が流れているかを確認しましょう。――捕虜からも話を聞く必要がありそうです」



 イワナガヒメを不安にさせないよう気遣う法明だったが、その表情は険しさを隠しきれずにいた。(やっかいなことになった)と、人知れず頭を悩ますのだった。


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