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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第六部 “和国・北洲の戦い”編②
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【第六部】第十七章 富央城奪還戦後報告会②

――富央城・本丸・仮設指令所――



「わざわざ法明殿が立ち会わなくても、言って下されば代わりましたぞ?」

「重要な事案だからな。今回は私が直接立ち会った。次回からは協力してもらえると助かる」


 話は捕虜収容所の件に移っている。諸将はやはり思うところがあるのだろう。それぞれに意見を上げる。


「本当に生かす必要などあったのか? 殺してしまった方が害は無いだろう」

「食料なども余裕があるわけではないぞ? 妖獣に分け与えるなど、民から不満も噴出しよう」

「だが、あの者達が協力する条件にあったのだ、致し方あるまい」

「実際、それに見合う戦果は上げている訳だしな」

「だからと言って――」


 皆が思い思いに意見する。いつもなら椿が手でも打ち鳴らして場をしきるところだが、残念ながら今はいない。そういう時は法明が場をおさめるところだが、どこか心あらずと言った感じで上の空だった。


 それに真っ先に気付いたのは、やはりというべきかイワナガヒメだった。


「法明?」

「――――、あぁ。失礼しました。考え事をしていたもので」

「法明も指揮や色々な仕事で疲れているのでしょう。ごめんなさい、会議に呼び出して」

「滅相もありません。私の不徳の致すところ。申し訳ありません」


 イワナガヒメの気遣いを申し訳なく思う法明は、自分のせいだと平謝りする。


 そんな珍しい失態をさらす法明に、諸将からも声がかけられた。


「獣小屋に行ったのだ。気分も悪くなるというものであろう」

「だから私は会話など無用と意見していたのです。ただ生かし、最低限の食料を与えておけばよい」


 妖獣が憎い諸将からはやはり“嫌悪”の言葉が出てくる。捕虜収容所での出来事を体験するまでは法明は気にもしなかっただろうが、体験した今となっては無性に気にかかる。


――迷いながらも、法明は自身の思うところを口にした。



「捕虜収容所でも、案の定、妖獣達と恨みのぶつけ合いとなった。向こうに弁の達者な神獣がいてな……」

「獣風情が生意気ですな」

「こちらの情けで生かしてやっているというのに、勘違いも甚だしい」


 やはり妖獣憎しの意見ばかりが出るが、法明は疲れたように少し笑った。


「それに応対したのは神楽だ。ただここに流れ着いただけだというのに、我々の心情を慮り、的確に意見を代弁してくれたのだ」

「あの者が……」

「若いのに口達者なやつだとは思っておりましたが、やはり、頭はキレるようですな」


 神楽に対しては仲間意識が芽生えてきているので、直接褒める者も出始めていた。


 イワナガヒメはそれを喜びつつも、法明が浮かない顔をしているので、胸のつかえを取るために続きをうながす。


「法明。思うところを話していいのですよ? どんな意見だろうと、わたくしは拒絶しません」


 そんなイワナガヒメのフォローに、参ったなというように苦笑いすると、法明は意を決して思うところの核心を語り出す。



「我々は、妖獣との対話など試みたことはなかった。だが神楽達を見て、そのような選択肢もあるのかもしれないと思った次第です」

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