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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第六部 “和国・北洲の戦い”編②
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【第六部】第十六章 富央城奪還戦後報告会①

――富央城・本丸・仮設指令所――


 侍の将の一人が紙に書かれた報告を読み上げる。


「各隊から上がって来た報告をまとめますと、我が軍の被害は重傷および死者52名、うち死者は36名です」

「そうですか……」


 戦後に受ける人的被害報告は、イワナガヒメにとって毎度“苦痛”の一言に尽きた。


 イワナガヒメにとって、和国民皆が大事な家族であり、それらが命を散らすのは、自分の身を引き裂かれる程の心の痛みを与えてくる。


 だからと言って逃げる訳にはいかない。彼らは、自分の命令により死んだようなものなのだ。少なくとも、イワナガヒメは、戦争で出る犠牲に対してそのように捉えていた。


「後で、亡くなった方々の名簿を貸してください……」


 戦没者は共同墓地で大きな墓石にその名を刻むが、せめて自分は絶対に忘れぬよう心に刻み込もうとイワナガヒメは毎回死者名簿を借りてその写しを自分でとっていた。


 法明や椿からは、姫様が全て背負う必要は無いからやめるよう何度も諭されているが、『わたくしがそうしたいのです』と言って一向にやめようとはしなかった。


 少し暗くなった場に明るさを戻そうと、報告している将が続きを読み上げる。


「ですが、敵軍はおよそ千二百おりましたが、捕虜としてとらえた百体をのぞき、残さず殲滅しました。快勝と言って差し支えない戦果です」

「そうですぞ姫様! このような快挙、初めてではないですかな!?」

「やはり、牛頭達精鋭を先に倒せたのが大きいでしょう」

「その立役者の椿殿はどちらに?」


 話は椿達天守閣奇襲組に及ぶが、今この場に椿はいなかった。会議が始まる前から皆気付いてはいたが、話の流れ的にちょうどいいので疑問の声が上がるのだった。


 それにはイワナガヒメが答える。


「椿は心身共に疲労の色が濃かったので、わたくしが無理矢理休ませました。唯に付き添うようお願いしてるので、今日はこれ以上無茶はできないでしょう」


 少し困ったように眉をハの字にしながら言うイワナガヒメだが、諸将はさもあらんとうなずきを返す。


「牛頭を筆頭に敵の精鋭を余さず誅殺する大立まわりをしたのだ。疲労も当然だろう」

「流石は椿殿だ。やはり頼りになる」

「椿殿もそうだが、あの協力者もやるではないか」

「ああ。負けてはおれんな」

「その協力者は今どうしてるのだ?」


 今回の天守閣奇襲が大成功に終わったことで、協力者――神楽の株も上がっていた。


 法明との模擬戦でその実力の高さ知れわたってはいたが、妖獣達を仲間にしていることで、表に出さずとも信用していない者は実のところ多かった。


 それが今回、椿と共に敵の首魁を残さず倒してみせたことで、まだ完全にとはいかないが、信頼は確実に築いていた。


 琥珀や青姫も天守閣奇襲には参戦し多大な活躍をしたのだが、それには誰も触れない。


 やはり、味方とは言え、妖獣を褒め称えるのにはまだ抵抗があるのだろう。


 神楽が今どうしてるかの話になり、法明が口を開く。



「神楽だが、先程私と共に妖獣の捕虜を収容している施設に行ってきたところだ。今頃は屋敷に戻り休んでるだろう」

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