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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第六部 “和国・北洲の戦い”編②
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【第六部】第七章 予約

――支部長室――



「……なんでそこで“青ノ翼”が出てくるんですか?」


 エリスの放つプレッシャーに、イザベラは思わず茶器を落としそうになる。なんとか気を取り直してテーブルの上に置いた。


(なんでこの嬢ちゃんはこうも機嫌がころころ変わるんだい!?)


 やっと話がまとまりかけていたのにと、イザベラは少しげんなりする。ちらっと女性秘書を見る。


(私ですか!? ――嫌ですよ!)

(頼む! このお嬢ちゃん苦手!!)


 イザベラと秘書。長年付き添ってきたパートナーだからこそできるアイコンタクトだった。秘書は小さくため息をついて、イザベラの席の後ろに移動した。


――いざという時、イザベラを盾にしようかという心情が態度に出すぎていた。だが、イザベラにも気持ちはわかるので黙っておく。


 秘書は対面のエリスに笑顔で語りかける。



「個人のプライバシーは――――」

「聞き方を変えるわね? ――“青ノ翼”に、女性はいる?」


 エリスの問いに、『うぐっ!』と声をつまらせる秘書。そこに話を持っていかないよう気をつけていたのに、向こうから単刀直入にきてしまった。


「おい、エリス……」

「カールは黙ってて」

「お、おぅ」


 エリスをたしなめようとしたカール、即座に引き下がる。秘書は心の内で泣く。


「女性は一人だけいらっしゃいますが……」

「美人?」

「そ、そういう質問には――――」

「――あ! 思い出したよエリスちゃん! 前にエーリッヒさんが学校に来てアレン君と闘技場で闘った時、観客席に小柄な銀髪のどえらい美少女がいたよ!! 勝負の後、エーリッヒさんと合流してたし間違いないよ!!」


 流石は天然クレアというべきか、その場の空気を読まずに爆弾を投下――というか、エリスという爆弾の導線に火をつける。エリスの口元がひくついておさまらない。


「へ、へ~~~。……まさか、その美少女達と、中つ国で大立ちまわりをしたのかしら? アレンは」

「「………………」」


 エリスの問いかけに黙り込む秘書とイザベラ。その沈黙こそが肯定だった。


――エリスの怒気が急激に膨れ上がる。魔法を暴走させない自制心はなんとか身に付けているようだ。その点は以前よりも成長していると言えるだろう。



「エ、エリスちゃん。ただの仕事仲間なのかもしれないよ?」

「そ、そうよお嬢ちゃん。その子の言う通り。彼が()()“青ノ翼”に入らず無所属なのがいい証拠じゃないかい!?」


 クレア、イザベラが必死にフォローする。このいつ爆発してもおかしくない爆弾をどうにかしなければと必死だった。――クレアは、自分で着火していたのだが……。


 秘書がイザベラに目合わせして訴える。


(でも、イザベラ様。レインさんがアレン君にご執心って、この支部でも噂で持ちきりですよ!?)

(た、ただの噂よ。惑わされちゃいけないわ……。“あの時”のは、きっとレインの嬢ちゃんの気まぐれよ。――いい? すぐにバレるかもしれないけど、今は隠すの。この子がここで暴れたら困るでしょ?)


 そしてうなずき合う二人。そんな二人をエリスはじっと見ていた。そして、問う。


「――まさか、“青ノ翼”がアレンの加入を“予約済み”とかはないですよね……?」


 イザベラと秘書の身体がビクンと跳ねる。――そして、気まずそうに目をそらした。


――そう。実はレインから、『……アレンは予約済み。だから、他のギルドには入らせないで』と、この支部の受付に“内緒のお願い相談”が入っていたのだ。


 それを知った時のイザベラと秘書の会話はこうだ。



『へぇ! あのレインの嬢ちゃんがねぇ!! 男に全く興味無さそうだったけどねぇ』

『受付嬢達は大盛り上がりでしたよ。――男衆からは怒声がわき起こってましたが……。レインさんは大人気ですからね。でも、困ったものです……。そんなお願い、ギルドだって困りますよ。普通に私事じゃないですか』

『あの子は天然なところがあるからね……。まぁ、そこが魅力でもあるんだけど。でも“青ノ翼”は、うちの支部の看板ギルドだ。多少の無茶なら聞いてやろうじゃないか!』

『まぁ、これくらいでしたらね』


 冗談交じりにそう談笑しながら語り合っていたこともあった。――まさか、こんな形で自分達に降りかかってくるとは思ってもいなかった二人だが。



 エリスは、困り顔のイザベラと秘書を見て――笑った。可愛らしい笑顔なのに、逆に怖い。


「“私達も”アレンを予約します。アレンを見つけてうちのギルドに入らせますから、それまで手出しは無用でお願いしますね?」


 沈黙を返すイザベラと秘書。苦労人カールとしては、胃が痛くなってきた。

 

(アレン~~~! 今度あったら絶対逃がさないからな!! 絶対! 絶対だ!!)



 そうして、アレン――神楽の知らぬ間に、本人の意思とは関係なくまた“予約”が増えているのだった。


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