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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第五部 “和国・北洲の戦い”編①
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【第五部】第八十九章 【琥珀・過去編】⑥


 山の中を子供と歩き続けると、辺りはすっかり暗くなっていた。そのうち明かりがいくつも見えてきて、そこが里なのだとわかる。


「みゃあ……」

「だいじょうぶだって。オレを信じろ!」


 子供の服の裾をつまみながら、明かりの一つへと歩いて向かった。


――“御使いの一族”隠れ里・神楽の家――



「ただいま~」

「神楽! またお前は里を抜け出して! ――って、その子は?」

「見ない子だね。お兄ちゃん……まさか」

「一人で寂しそうだったから連れてきた」


 戸を開くと、家の中から女の人が二人現れた。慌てて子供の背に隠れる。


「あらあら。山道、大変だったでしょう? お夕飯にしましょう」

「お母さん、いいの!?」

「これも何かの縁でしょ。楓、手伝って」

「もう! 長老に怒られても知らないよ!」

「長老には明日話に行くよ」

「そうね。そうしなさい。――さ、あなたもいらっしゃい」


 何を話しているのかはよくわからないけど、手招きされて子供にくっついて行った。


 椅子に座ると、しばらくしてごちそうが運ばれてきた。思わずかぶりつこうとすると、子供に止められた。


「みんなで一緒に食べ始めるの! もう少し待ってな?」

「みゃあ~……」


 うらめしげに睨むが、子供は全く気にせず準備を手伝っていた。やがて、食事を運び終えたのか、皆が席につく。


「「「いただきます!」」」


 皆が手を合わせているので真似てみる。そして、皆が食べ始めたのでソワソワと子供を見た。


「いいよ。好きなだけお食べ」

「みゃあ♪」


 さっそく野菜の入ったスープに舌をつっこみ――火傷した。


「みゃあ!?」

「おいぃ!? なんも成長してねぇ!!」

「み、水持ってくるわね!」

「だいじょうぶ!?」


 水の入った器を手渡され、舌を冷やした。


「今日はじめて人化したらしくて」

「それを早く言ってよ!」

「あらあら。じゃあ、食べやすくしてあげるわね?」


 ふーふーと息をふきかけ適度に冷ました野菜スープや、具をごはんの中に入れたおにぎり、骨を抜いた焼き魚などが出てきた。


 手で持ち食らいつくと、どれもとても美味しかった。


「みゃあ♪」

「あらあら。喜んでもらえてよかったわ」

「いいか? 人に嬉しいことをしてもらったら『ありがとう』って言うんだ」

「あ、りがと……?」

「どういたしまして♪」


 たどたどしいながらも、今覚えた新しい言葉を話す。すると、みんなが笑顔になった。それが嬉しくて、何度も繰り返した。


「ありがと! ありがと! ありがと!」

「お礼は一度でいいんだよ。――ほら、これもうまいぞ?」


 子供がさじでよそった料理を自分の口元に差し出してきた。


「みゃあ!?」

「匙ごと食うなって! 中身! 中身!」

「もう! まだ慣れてないんだから気をつけなさい!!」

「オレ!?」

「今のはお兄ちゃんが悪い!」


 また笑い声が起こる。よくわからないけど、それが嬉しかった。


「みゃあ!!♪」



 そうして、自分は子供の家に一緒に住むことになった。


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