【第五部】第七十三章 富央城攻略戦⑨
――富央城・二の丸――
「何が起こっている!?」
城外や三の丸で起こっている異変は、鬨の声が上がることでようやく二の丸にいる妖獣達の知るところとなった。
城外遠くからの角笛は、三の丸よりも内側にある二の丸までは届かなかったのだ。
そして、三の丸の妖獣達が状況を確かめようと動き出したところの急な状況変化であったため、二の丸内部にまでは情報が届いていなかった。
そのため、グースカと寝ていた者達も多い。
富央城の構造は、天守閣から外側に向かって本丸、二の丸、三の丸と配置されているが、牛頭は自分の群れの序列によって住み分けをしていた。
天守閣に近付く程神獣の割合は高くなり、戦闘力が高い者が配置されている。
世話係や見張りなどの雑用も多くいるため一概には区分できないが、主戦力の配分としてはその通りになっていた。
二の丸にいる牛の神獣も、他の妖獣達同様怒号を上げながら召し使いの妖獣に状況を確認してくるよう命じた。
報告待ちで手持ちぶさたになった牛の神獣は、屋敷の庭に出る。そして、群れの頭である牛頭はどうしているのか、この事態に気付いているのかとふと気になり、振り返って天守閣のある方を見上げた。
「バ、カな…………」
そして、あまりの事態に今さらながら気付き、牛の神獣は絶句するのだった。
――天守閣は、蒼い炎の壁に囲まれていた。




