【第一部】稲姫の記憶編 後編 幕間【一】女ったらし?
「天然ジゴロ」
「おまえはやっぱりすごい奴だよ」
「にゃはは。うちがそんなことされたら、コロっといっちゃうにゃ♪」
幼少期のアレン――カグラが稲姫にペアの首飾りをあげたことに対する反応は三者三様だった。エリスの発言にはトゲがあるな……カールからはなぜか尊敬のまなざしを感じる。琥珀は他人の話なのに身悶えている。
「まさか幼少期からそんなに女の子を追いかけてるとは思わなかったわ。まさか、他にもいるんじゃないでしょうね?」
「ご主人はモテモテだったにゃ♪」
「琥珀、ちょっと待て。今その発言をされると、俺の身が危険だ」
「うらやましい……なんでこいつばっかり」
稲姫は昔の思い出に浸っているのか、優しい顔をしていた。
「しかし、やはり俺の一族は、色々な場所を渡り歩いてたんだな」
これ以上は危険だと考え、アレンは強引に話題を変える。
「そっか……ご主人は記憶を失ってるんだったにゃ」
琥珀が俺を見て悲しそうな顔をする。そうか、琥珀も稲姫同様、過去の俺を知ってるんだもんな。
「ごめんな……どうしてかはわからないんだが、記憶が無いんだ。でも、稲姫と琥珀のことは、少しずつだけど思い出せてきてるよ」
アレンがそう言うと、琥珀が笑って抱きついてきた。
「大丈夫にゃ。うちはちゃんと覚えてるし、これからまた一緒に思い出を作っていくにゃ♪」
「は、離れなさいよ!」
琥珀は昔からムードメイカーだったんだろう。すごく懐かしさを感じる。
――ふと稲姫を見ると、悲しげな笑顔をしていた。




