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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第五部 “和国・北洲の戦い”編①
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【第五部】第六十五章 富央城攻略戦①


――富央城。


 北州中央にそびえ立つ山城であり、周囲を天然の要害で固めた難攻不落の城である。


 一月前、妖獣の大群に力押しで攻め落とされてしまったが、長らく人界軍を支えてきた要の城であり、この城の奪還は人界軍の反抗作戦において必須かつ悲願と言えた。


 一際高い位置に天守閣があり、そこから外縁に向かって本丸、二の丸、三の丸が配置されている。


 山の麓から進軍し外縁から攻略していくのが正攻法であり、従来の人界軍が取れる唯一の戦略だった。実際に本隊はそうしているが、今回は事情が違う。


 神楽と青姫だけとは言え、飛行可能な戦力が加わったことで、精鋭を敵の心臓部に送り込んでの奇襲が可能となった。


――神楽。椿。青姫。琥珀。


 たった四人ではあるが、この世界において、戦いの優劣を質が決定づけた事例は枚挙にいとまがない。


 代表的には神族や魔族だが、人界や獣界にたった数人で侵攻し、圧倒的な力でその地を奪い取った事件は、今も語り草となっている。


 また、和国の神獣の中でも特に力を持った個体である大嶽丸、酒呑童子、玉藻の前は“和国三大妖怪”と呼ばれ、彼らが人界にもたらした悲劇は今もおそれと共に人の世に語り継がれている。


――妖怪と妖獣。この世界において、その境に明確な線引きは無い。ただ、和国では一般的に、妖獣の中でも人の理解が及ばない領域にまで到達した神獣をそう呼び習わす風習がある。


 個の力は、時に大群をも凌駕する。それを実践するがごとく、早朝の晴れた上空を、神楽達は飛びながら天守閣目指して飛行するのだった。


――富央城・山麓――



「行きましたね」

「ああ。私達も行くぞ」


 上空を見つめる唯と彩乃は、ついに待ち望んでいた時が来たことを知る。



『諦めてんじゃねぇっ!! 北西にもまだ城はある!! イワナガヒメとコノハナサクヤヒメを城に逃がせ!! 退却までの時は俺が稼ぐ!!』


 一月前。夜中に妖獣の大群に攻め込まれた際、この富央城で五助に時間を稼いでもらい、二人は姫様達を連れて城から逃げ延びた。


 その時に聞いた牛頭の雄叫びや獣共の鬨の声は脳裏にこびりつき、今でも忘れられない。自分の力の無さを呪い、泣きながら逃げることしかできなかった二人だが、今は違う。


 雪辱を晴らす機会を得た二人の顔には、以前の弱さは欠片も残っていない。ただただ、城奪還と妖獣達への復讐に燃えた決意だけがその顔に宿っていた。



 唯と彩乃は申告通り、富央城へ攻め込む本隊二千五百の先駆けとなる部隊を任されていた。


 唯が陰陽師部隊を、彩乃が侍部隊を引き連れている。どちらの部隊も精鋭揃いで各々五十人で編成されている。


 椿達が天守閣に向かい飛び立つのを確認すると、二人は自部隊に号令をかける。


「これより! 私達も富央城に攻め込む! いいか! 椿様達に遅れを取るな!!」

「私達が味方の道を開きます! すぐに混戦となるでしょう! ですが、止まらず、敵陣を中央から突き崩していきます!! 味方を信じて突き進みましょう!!」


 奇襲作戦であるため、鬨の声は上げない。だが、各人の顔には並々ならぬ決意が見て取れた。


 唯と彩乃はそれに満足げに頷くと、二人声を揃えて号令を発する。



「「いざ! 出陣!!」」



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