【第五部】第六十三章 【過去編】⑥飛翔
――“御使いの一族”の里・神盟旅団本部――
「おお!? 飛べる! 飛べてるぞ!!」
「上手ですの!♪」
「我が君! ピノ! ちょっと待つのじゃ!!」
お堂の外に出た神楽は早速羽ばたいて飛翔する。ピノはそんな神楽の横を楽しそうに飛んでいる。焦った青姫が慌てて二人を追いかけた。
そんな時――
「うわっ……キモっ」
思わず皆が声の発生源を見る。クレハだった。皆が驚きで静かだったからか、その声は不思議とよく通った。
◆
クレハの声が聞こえたのだろう。ピノがキッ!とクレハをにらむ。
「気持ち悪くないですの! カッコいいですの!!」
「べ、別にあんたに言った訳じゃないわよ! カグラには似合わないって言ってんの!!」
「なんだちびすけ。うらやましいのか?」
ピノの横で神楽がドヤ顔だ。得意気にあおってみせる。
「あ、あんたねぇ~……っ!!」
クレハが飛んだ。風属性の上級魔法<飛行>で。そして神楽に向かってくる。
「――あ。こいつ飛べるんだった……。逃げるぞピノ!!」
「はいですの!!♪」
「だ、だから待つのじゃ!」
「待ちなさぁ~~~いっ!!」
そうして、しばらくの間、空中での追いかけっこが繰り広げられるのだった。
◆
「――うん。戻せるな」
「よかったでありんす……」
しばらくして、神楽達は地上に戻ってきた。皆が『はよ戻れ』と急かしてくるので、渋々ながらも神楽は羽を解除した。光に包まれると、元の腕がある。服も着ていた。
「どうやってるでありんすか……?」
「よくわからんが、俺も魔素を持てるようになったみたいだ。たぶん、それでだろうな」
「余と縁を結んだ時からじゃな。――なんだ、気付いておらなんだのか?」
「俺と縁を結んだ後は、身体の気の量が増してるだろう?」
「た、たしかに!? なんか違和感あると思ったら!!」
朱雀と白虎にそう言われ自身の身体を確認しハッとなる神楽。今までに無い変化に戸惑っている。
「なるほど? つまり、魔素を持ったから、ピノの形態変化的な身体の変質も可能になった?」
「おそらくはな」
「服は?」
「知らんが、其方の魔素が染み込んでるからじゃろ? 青姫達と同じじゃ」
「へ~……便利なもんだな」
神楽は試しに服を変化できないか試してみる。朱雀の言う通り、自分の魔素が染み込んでいて、なんなく思った通りのものに変化させられる。
「もうあんた、人間じゃないんじゃないの……?」
呆れたようなクレハのそんな発言だが、うなずく者は多かった。
「我が君。腕以外には羽を出せないのかえ?」
「試してみるか……できた!」
青姫の提案に従い、自分の背に意識を向ける神楽。今しがた獲得した<形態変化―翼―>を試してみる。
すると、問題なく背中に羽が生えた。飛翔し、スイスイと空を飛んでみせる。これならまぁと、皆も神楽が羽を生やすのを認めるのだった。
そうして神楽は、複数の有用スキルを獲得した!




