【第五部】第六十二章 【過去編】⑤縁結び……ピノ
――“御使いの一族”の里・神盟旅団本部・お堂――
ピノと二人で円形の縄の中に入ると、神主が祝詞をとなえ始める。
やがて――
「ん? ――んん?」
ピノと面対して手を繋いでいると――ピノは手と言うより羽だが――神楽は自分の手がムズムズするのを感じる。
だが、今は儀式中。なんとかこらえる。やがて、縄の外にまかれた粉が舞い上がり純白に輝き、儀式は終わった。
◆
「ピノ! 綺麗じゃったぞ!!」
「えへへ……♪」
「むぅ~……! ピノちゃんには負けられないでありんす!!
主様! わっちとももう一度やるでありんすよ!!」
「これこれ稲姫。我が君も疲れ……我が君?」
皆に迎えられる神楽とピノ。皆で取り囲み、儀式の成功を祝しているところ、青姫が神楽の様子がおかしいことに気付く。
両腕を抱き抱えて、何かを我慢するようにこらえている。
そして――
「もう無理!」
ポン! と小気味よい音が神楽から出て、神楽の両腕が羽になった。
◆
「「「……………………」」」
皆、絶句。さしもの神主ですら、口をぽかんと開けている。いや、一人例外がいた。
「ピノと同じですの! カッコいいですの!!♪」
ピノが、『仲間が増えた!♪』と言わんばかりに神楽の周りを嬉しそうに飛び跳ねる。
ハッと我に返った皆が、慌てて神楽に殺到する。
「い、いやいや我が君! 大丈夫かえ!?」
「ご、ご主人がおいしそうな鳥に!?」
「主様! 戻れるでありんすか!?」
「……神主さん。どういうこと?」
「いや、私にも何が何だか……。――ちょ、胸ぐらを掴まないで!」
「落ち着けレイン!」
「そうだよ。まずは戻れるかだよ」
皆が混乱に陥る。戻れるか試してみようということになるが――
「その前に、折角だしさ。空を飛んでみたい」
神楽は非常にソワソワしながらお堂を出たがっていた。
神楽の緊張感の無いセリフに皆が脱力し無言でいると、神楽はそれを肯定と受け止り、ピノと二人で嬉しそうにお堂の外に飛び出すのだった。




