【第五部】第六十一章 【過去編】④縁結び……朱雀、白虎
――“御使いの一族”の里・神盟旅団本部・お堂――
「では、誰からされますか?」
「もちろん余じゃ!!」
神主の問いかけに、朱雀が元気に答え前に出る。
「神主さん、ほんとに……?」
「そのためにここに来たのではないのですか?」
怖じ気づく神楽をジロリとにらむ神主。神楽も覚悟を決めて前に出るのだった。
◆
「神楽よ。この像はなんじゃ?」
「ん? ――ああ。それは、うちの一族のご先祖様と、そのパートナーの神獣様らしい」
お堂の中には、ある人間の男性と、稲姫の様に人化した神獣の女性が手を取り合い、微笑みながら見つめ合う像が祀られていた。
そう説明すると、朱雀も納得顔だ。
「ふむふむ。本当に仲が良かったのであろうな。でなければ、この様な幸せそうな表情はしておらんじゃろうて」
朱雀の言う通り、二人の像は、見る者の心を温かくさせる程幸せそうなものだった。
(この二人がいなければ、きっと今の“御使いの一族”は無かったのかもな……)
神楽もなんとはなしに像を見つめそう思う。やがで、こちらに声をかける神主の指示に従い、朱雀と縁結びを執り行うのだった。
◆
「朱雀様! おキレイでしたの!!」
「当然じゃ! 余と神楽じゃからな!!」
朱雀との縁結びが終わり、二人して縄の外に出る。
ピノの言う通り、とても綺麗な光景だった。
儀式中、二人の入った輪の外に灰色の粉がまかれたが、これは、儀式の成否を見極めるためのものであり、縁結びが問題なく成れば、灰色の粉は輝きを放つ。
その色合いは当事者によって様々であり、神楽と朱雀とでは燃えるような真紅だった。それが威容を誇るように光り輝くものだから、見ていた者達から感嘆のため息がもれた程だ。
「どれ。次は俺だな」
「じゃあ、やるか」
朱雀が下がると、ウズウズしていたのだろう、白虎が前に出る。そして、白虎と二人で縁結びを執り行うのだった。
◆
「白虎様もスゴかったですの! キレイな金ピカでしたの!!」
「ははは! そうだろう!?」
「うむ。余にはちぃとばかし及ばないが、見事じゃった!!」
白虎との縁結びでは、粉は金色に輝いた。それも輝き方が力強く、見た目凄く豪華だった。
「最後はピノだな」
「はいですの!」
最後はピノだった。神楽はピノと二人で地面に敷かれた円形の縄の中に入るのだった。




