【第五部】第五十九章 【過去編】②団子屋
――“御使いの一族”の里・団子屋――
「いらっしゃいませ~!!♪ ――って、なんだ、お兄ちゃんか」
「おい、露骨にがっかりするなよ。結構人数いるが、大丈夫か?」
「うん! 追加の席を用意するね? 今日は晴れてて気持ちいいから、外の方が見晴らしがキレイでいいよね? こちらにど~ぞ~♪」
皆を連れて団子屋に来た神楽。そこは楓の働いている店だった。神楽達は結構な大所帯で来たが、従業員達がテキパキと外に追加の席を手配し、ほとんど待たずに席まで案内された。
そして、皆、思い思いの席に座り、注文した大量の団子が席に来ると、一斉に食べ始めた。
◆
「か~~~っ!! ウマイ!!」
「確かにおいしいわね。――って、ガイル! あんた、お酒飲んでんの!? まだ昼だし、ダンゴはお菓子よ!?」
「いいじゃねぇか! 細かいことは言いっこ無しでよ!!」
団子に絶賛のガイル。その気持ちのよい称賛っぷりに、楓達従業員は皆、笑顔だ。
クレハの言う通り、まだ昼なのにガイルは酒を飲んでいた。――便乗してか、朱雀や白虎、琥珀、ラルフも。
皆、とても美味しそうに食べたり飲んだりしているので、従業員達もニコニコと酒を注いだりしている。
――まさかの、団子屋での飲み会と化していた。
◆
「ほれ、ピノ。あ~ん……」
「――――っ! おいしいですの!♪」
一方、こちらは青姫とピノ。ピノが“鳥人”で、腕が羽で串を取りにくそうなので、青姫が手ずから団子をピノの口まで運んであげている。
ピノはニコニコと嬉しそうに団子を次々と食べていく。様々な種類の団子があるが、ピノのお気に入りはみたらしのようだ。
嬉しそうに手羽をパタパタとさせている。なんとも微笑ましい光景で、神楽も口元をゆるめながら近付いていった。
「そういや、ピノ。手が羽だと、いつも食事に困らないか?」
神楽が声をかけると、ピノは口の中の団子を飲み下してから笑って答えた。
「小さいのは難しいけど、ある程度は持てますの!」
「へ~。器用なんだな」
(鳥ってクチバシでついばむが、ピノには無いしな。それで発達したのかな?)
神楽はピノの身体を見回す。すると、青姫がジト目で注意してくる。
「我が君。女子の身体をジロジロ見るでない」
「――あ! ごめん……」
「見たいなら、今夜にでもわらわのをたっぷりと見るがよいぞ!!」
「台無しだよ!!」
そんな漫才のようなやり取りを神楽と青姫が繰り広げていると――
「ピノの身体……やっぱり変ですの?」
ピノがしょぼんとしていた。『あっ!』と、急に態度を改める神楽と青姫。
「悪い! そうじゃなくて、珍しいからさ、幻獣って」
「そうじゃぞ? な~んにも変じゃない。珍しくてつい見てしまうだけじゃ。それに、わらわはキレイな羽に思うぞ?」
青姫にほめられ、ピノも少しだが機嫌をなおしてくれた。
(そりゃあそうだよな……。みんなからジロジロ見られたら、やっぱ嫌だよな)
これからは気を付けなければと、神楽も反省する。
この時の神楽は、すぐこの後、自分がピノの気持ちを実際に体験することになるとは、夢にも思っていなかった。




