【第五部】第五十一章 作戦会議④
――留城・本丸・作戦会議室――
「わたくし達は、この宝石のようにキレイな結晶のことを“神結晶”と呼んでいます。――神楽様達は、この結晶について、どこまでご存じですか?」
イワナガヒメが、特大の絆石――イワナガヒメ達の呼ぶところの神結晶――を胸の前に持ち上げながら、神楽達に尋ねる。
「うち――“御使いの一族”では、それは“絆石”と呼ばれている。その石を二つに割って、その欠片をそれぞれ、仲いい同士が持つのが風習だな」
神楽が素直に告げると、諸将から罵詈雑言が神楽に浴びせられる。
「神結晶を割るなど、なんと罰当たりな!!」
「考えられん……」
「蛮族が!」
その言いたい放題な言いぐさに、神楽達の機嫌が急降下する。それを察したイワナガヒメが、あわてて間に入った。
「結晶を分けて持つのには理由があるのでしょう?」
「ああ。お互いの存在を常に感じられるようにだ。ご先祖様と妖獣のパートナーが始めた風習だが、実用性だってある。俺と稲姫が実際に経験したが、ピンチの稲姫がその石を通って俺のところに逃げて来たこともあるからな」
「あの時はわっちも驚いたでありんすよ」
神楽と稲姫は特に疑問も持たず語るが、法明から待ったがかかった。
「すまん。話についていけん。――つまりだ。割れた神結晶の片方からもう片方に“転移”できるということか?」
「言われてみれば、確かに転移だな」
「場所がだいぶ離れてたでありんすからね」
なるほどとうなずく神楽と稲姫。法明が疲れたように、目頭をおさえながら続ける。
「なぜそのようなことができるのだ……? いくら神結晶と言えども、常識の範疇外だ。――すみません姫様。話を脱線させてしまいました」
「いえ、全然構いませんよ? 興味深い使い方ですね。――神結晶は、わたくしの<守護結界>を付与するだけでなく、他の力も付与できます。その神結晶には、転移の力が付与されていたのかもしれませんね。あるいは、神結晶自体の持つ特性でしょうか?」
イワナガヒメまでもが悩みだしてしまった。コノハナサクヤヒメが間に入る。
「姉様。興味を持つのはいいけど、今は作戦会議中だから」
「――っ! そうでした! ごめんなさい! 話を続けますね」
コノハナサクヤヒメに注意され、ハッと我に返るイワナガヒメ。こほんと可愛いらしく咳払いすると、話をもとに戻した。
「神結晶は高純度な魔素の結晶体。それ故に、魔素に関する現象への干渉力があるのです」




