【第五部】第五十章 作戦会議③
――留城・本丸・作戦会議室――
エーリッヒが、皆に見えるよう、皮袋から取り出した特大の絆石二つをかかげてみせた。
場が大騒ぎになる。
「か、神楽様! ソレを確認させて頂いてもよろしいでしょうか!?」
「ああ。別に構わないけど……エーリッヒさん」
「わかった。――はい」
普段落ち着いているイワナガヒメでさえも狂わせるこの石は一体何者……? と思いつつも、神楽達はイワナガヒメに絆石を手渡した。
イワナガヒメは二つの絆石を慎重に受けとると左腕で胸元に抱え、右手をかざした。すると――
◆
「お、おぉ!? 石が光ってる!!」
神楽達からどよめきが起こる。薄青い絆石がまばゆく光ったのだ。少しして発光はおさまったが、石は前よりも輝いているように見える。
「わたくしの<守護結界>の力を付与してみたのです。――どうやら、これは本当に“神結晶”のようですね。こんな大きなものが、しかも二つも……」
「姫様! コレがあれば!?」
「落ち着きなさい、椿。コレは、神楽様達のものです」
椿にそう言いつつも、イワナガヒメはモノ凄く物欲しそうに、神楽の方をチラチラと見てくる。――大事そうに両腕で絆石を二つ抱き抱えながら。
ふと、神楽の左腕が取られた。
◆
「ねぇ、神楽さん? もし、この石をわたし達にくれるなら~……。――わたしが、イイコトしてあげよっか?♪」
「間に合ってるにゃ!!」
「離れるでありんす!!」
「いきなりなんなんじゃ!?」
「……それは許されない」
「カグラって、いつもこんななの……?」
「貴様!? サクヤ様に何をする!?」
「小僧! サクヤ様から離れろ!!」
「俺が何をした!?」
コノハナサクヤヒメだった。しなをつくって神楽を誘惑しており、皆が引き剥がしにかかる。
彩乃や、コノハナサクヤヒメについている諸将からの殺気が半端ない。『言われなくても!』と、神楽はコノハナサクヤヒメの腕を皆と一緒に解いた。
「はぁ……はぁ…………」
なぜ急にこんなことになったのか……は、この絆石が原因なのはわかりきっているので、神楽はイワナガヒメに向き直る。
「ひ、姫様! 説明してくれ!!」
「神楽様は、やっぱりサクヤが……」
頼みの綱のイワナガヒメは、先程とはうって代わり、しょぼくれていた。胸元に抱える絆石二つを、いじいじと撫でている。
「神楽。色を好むのはいいが、程々にな。――姫様」
「――っ! そうでした! この神結晶についての説明ですね!?」
椿が軽蔑の目で神楽に軽く文句を言い捨て姫様に説明をうながすと、やっとのことでイワナガヒメが我に返る。
そうして、ようやく話が前に進むのだった。




