【第五部】第四十四章 自己紹介①
――留城・本丸・作戦会議室――
「では、まずお互いの自己紹介とまいりましょう! 神楽様のお連れの方達はまだですものね?」
神楽達の協力参戦が決まり、笑顔のイワナガヒメが、作戦会議前にまずエーリッヒ達や稲姫達神獣の自己紹介を求める。
(まぁ、相手の素性がわからないと、協力して戦いづらいだろうしな。俺達は遊撃部隊と言っていた気はするが……)
「みんな。簡単にでいいから自己紹介をしてくれないか?」
「うん。じゃあ、まずは僕らから」
エーリッヒが前に出た。そして、レイン、ラルフがその横に並ぶ。
◆
「僕達三人は、中つ国大陸や、さらにその西にあるエルガルド大陸を中心に活動するエクスプローラーです」
そして、エーリッヒ達が名乗っていく。すると、場がザワついた。
「“えくすぷろーらー”って何だ?」
「初めて聞くな」
どうやら、和国民には覚えがないようだ。以前、カールの親父さんが和国にわたり神社の写真を撮ったりしていたはずだが、あまり馴染みはないのだろう。
「エクスプローラーは簡単に言うと、“探検家”ですね。人の居住域拡大のために未開拓領域を探検したり、新しい技術を生み出して人の世に貢献する組織です」
「ちなみに、俺もそうです」
エーリッヒが説明すると、和国民の皆はキョトンとした。一部は興味を持っているようだが。ついでに『自分もそうだ』と神楽は付け足しておいた。
「それはなんともまぁ……余裕があるのだな? ――いや、バカにしている訳ではない。和国では皆、毎日が戦いで生死をかけているのでな」
皆の意見を代弁するように椿が言う。他の和国民も何人かうなずいた。
「そうですね。皆さんに比べたら余裕があるように思えるでしょうし、実際その通りに思います。――ただ、西は西でそれ程余裕は無いんです。妖獣だけでなく、神族や魔族の脅威にも晒されていますから。ついこの間も、中つ国で妖獣との大戦勃発の危機に見舞われましたし。――そこにいる神楽の働きで未然に防げはしましたが」
「いやいや、エーリッヒさん達もでしょう。琥珀達や四神獣達もだし。それに、ルーカス――“宵の明星”もね。皆で防いだ大戦だよ」
何故かよいしょしてくるエーリッヒに神楽としても意見しておく。場がザワついた。
「詳しく聞きたい話ではあるが、今はその余裕もない。――そちらも大変なのに軽んじてすまなかった」
「いや、いいよ。そっちが一番大変なのは、皆わかってるし」
素直に謝る椿に神楽がフォローを入れる。
「じゃ、次は琥珀達。自己紹介を頼む」
「はいにゃ♪」
そうして、自己紹介は琥珀達妖獣にうつるのだった。




