【第五部】第三十六章 神楽VS法明①
――留城・三の丸・訓練場――
さすがに本丸内で暴れるのは困るということで、法明から申し込まれた神楽との模擬戦は、三の丸にある訓練場でやることに。皆で移動した。
イワナガヒメから、神楽の強さを全く疑わない目で、「神楽様。お手数ですが、皆さんにお力を見せつけてあげてくださいませ!」と元気に言われてしまうと、「ああ、うん。はい……」と、しぶしぶながらも受けてしまう神楽だった。
「いや、これが手っ取り早いのはわかるよ? でもさ。俺はこう見えて、平和主義者なんだよ。力を見せ付けて目立ちたくもないし、認めて欲しいとかいう承認欲求もさらさらない。なのにさ――」
「でもご主人! “新しい力”を実践で使うチャンスにゃ!!」
愚痴る神楽に笑う琥珀。琥珀の明るさは、どんな時でも頼もしいが――
「そうじゃな。向こうでも練習はしたが、やはり、緊張感が伴う場で運用してみるのはよいと思うぞ?」
「今の主様には、誰も敵わないでありんすよ!」
「強大な力に振り回されるのではなく、我が物とする。――神楽よ。汝には、様々な妖獣達からの力がある。今や、過去奴らに捕らわれた時の比ではない。だからこそ、多種多様な力を一元管理し支配下に置く。それを少しでも多く、実戦で経験した方がよい」
妖獣勢、みんな模擬戦賛成派だった。むぅ……。
「……頑張って」
「負けんじゃねぇぞ!」
「今の君が負けるイメージは全然持てないけど……まぁ、程々にね」
「私もカグラの全力を見てみたい。私との時ですら、手を抜かれてたみたいだし」
“青ノ翼”三人とクリスからも肯定的な反応が。
(なんで俺の周りには、平和思考――というか、ことなかれ主義の奴はいないんだ!?)
神楽は若干、泣きたくなる。
「神楽様、準備はよろしいですか?」
「あ、はいはい……今、行きますよ」
ガヤガヤ騒がしい訓練場。本丸広場から移動してきた姫様達や諸将達だけでなく、元からこの場で訓練に励んでいた者達も、今や観衆となっている。
『椿と対等に渡り合った実力者』の触れ込みで、勝手に神楽の評価が爆上がりしてしまっているためだ。
(仕方無いか……それに、陰陽師だっけか? その力には興味がある)
その点だけは、神楽も楽しみだった。
(――うん。少しだが、テンションが回復してきた!)
先に訓練場の中央で待つ三人――法明とイワナガヒメ、椿――の元に、神楽は向かうのだった。




