【第五部】第三十四章 質疑応答
――留城・本丸内広場――
神楽が自己紹介するが、ピリッとした雰囲気は依然残ったままだ。軍属が拍手するとも思えないが、この雰囲気も如何なものだろうか。
イワナガヒメは周りが見えていないのか、あえて無視しているのかはわからないが、気にせず続けた。
「神楽様達には、椿の侍部隊、法明の陰陽師部隊と並び、独立した遊撃部隊を――」
イワナガヒメがそこまで言ったところで、挙手があった。姫様の話を中断させるのは不敬ではあるが、どうしても発言しなくては気がすまないのだろう。挙手をした法明の目は真剣そのものだった。
「姫様、お話中失礼します。よろしいでしょうか?」
「はい、もちろんです。皆さんも、気兼ねなく発言してください。この場は、神楽様方を受け入れる場でもあるのですから」
「そこの者達――神獣が複数体いるのは、何かの冗談ですか? 神楽殿が使役しているのでしょうか?」
先程帰ってきたばかりの法明達は知らなくて当然か。神楽は『当然の疑問か』と、それに対し答えることに。先日本丸内の大広間で話した内容を、情報を補完しながら法明達に語り聞かせた。
◆
「妖獣が仲間? 信頼を築いたら、その妖獣の力を使える? ――すまん。私の理解の範疇外だ」
「だが、事実だ。“御使いの一族”は皆そうだし、そういう者達もいると受け入れてもらうしかない」
「私達は、その妖獣と戦っているのだぞ? そこの妖獣達は納得しているのか?」
「仲間の了承は既に取ってある。妖獣と言えど、一枚岩じゃない。俺やあんた達がそうであるように」
法明と問答をしているうちに、だんだんとイラついてきた神楽の口調が怪しくなる。イワナガヒメがあせって間に入った。
「神楽様は、椿と並ぶ実力の持ち主です。お仲間の方々も、どなたも実力者ばかり。きっと、わたくし達の頼もしいお味方に――」
「椿と同等? ――椿、それは本当か?」
「ああ。――いや、むしろ、全力を出されたら神楽の方が上だろうな」
「それ程か…………」
侍部隊最強である椿が認めると、法明が黙り込む。話はこれまでかとホッと胸を撫で下ろす神楽だったが、それはいささか早すぎた。
「ならば、私と模擬戦をしてもらえないだろうか。お互いの命を預け合うのであれば、その力を知っておきたい」
法明のそんな発言に、神楽は内心『やっぱりこうなるのね……』と、ため息をつくのだった。




