【第五部】第二十七章 参戦条件
――留城・三の丸・屋敷――
「仲間とも話し合ったんだけど、俺達も参戦させてもらうよ」
「はい! ありがとうございます!!」
神楽が参戦を姫様達に切り出すと、イワナガヒメは昨日大広間でボロ泣きしていたとは思えない程の満面の笑みだった。
(――まさか、嵌められた? いや、流石にそんなことをする子には……)
神楽が戸惑っていると、それを察してか、コノハナサクヤヒメが神楽に近寄り耳打ちする。
(姉様のコレは“素”よ)
(だよなぁ……って、近い!?)
神楽がコノハナサクヤヒメの急接近に慌てふためくと、満足したのか、コノハナサクヤヒメはクスクス笑いながら元の位置に戻る。
そして――
「やはり、神楽様はサクヤが……」
「いや、待て。なんでこの流れに!?」
イワナガヒメが急にしょぼんとする。さっきまでの満面の笑顔が嘘のようだ。――ほんと、忙しいな!
――『ごほん!』
大きな咳払いが。椿だった。――了解。ともかく、話を進めよう。
「ただし、“条件がある”」
神楽がそう切り出すと、姫様達や椿、コノハナサクヤヒメの侍女が一気に警戒モードに。――というか、暴走モードに。
「貴様!! やはり、“狙いは姫様”か!?」
「まだ何も言ってないよ!?」
「ま、まさかサクヤを!?」
「――え!? えぇ~~~!?」
「サクヤ様お下がりください」
「え、ええっと……」
椿の誤解を発端に、イワナガヒメ、コノハナサクヤヒメとその侍女が一気に暴走する。唯だけは、“冷静に困っている”ようだ。
コノハナサクヤヒメは、顔を真っ赤にして、ほおを両手ではさんでいる。『どうしよう!?』という混乱が、仕草から見て取れる。神楽をチラチラ見てくる。
「ま、まだ、わたし達、知り合ったばかりだし……そんな急に言われても困るよ……」
「……神楽。早く本題」
「あ、はい……」
コノハナサクヤヒメがいやんいやんと照れ出したのにイラついたのか、レインがキレ気味に。
神楽は、強引に軌道を戻すため、直球で条件を提示する。
「条件は三つだ。一つ目。俺や俺の仲間達を、妖獣を含め一切襲わないこと。もちろん、こちらからも手出しはしない」
この条件は既に考えていたのだろう。イワナガヒメがうなずく。
「二つ目。俺達は全力で戦うが、死ぬまでは戦わない。“これ以上はどうしようもない”と判断したら退く。その判断はこちらに任せてもらう」
これには、コノハナサクヤヒメの侍女は不満がありそうだ。他は、唇を真一文字に引き結び、神楽をじっと見つめている。
そして、神楽は最後の条件――一番の難題だろう条件を姫様達に切り出した。
「最後の条件。敵の妖獣の中で戦意を喪失し、なおかつこちらに降伏し従順な態度を取る者達は、俺達に処遇を委ねてもらう。――以上の三条件のうち、どれか一つでも守られないものがあれば、俺達は即座に手を引かせてもらう」




