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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第五部 “和国・北洲の戦い”編①
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【第五部】第十四章 土下座

――和国・北州・北部海岸部――



「お名前をお聞かせ願えますか?」

「ありがとう! やっとまともに話せる人に会えた!!」


 神楽は嬉し涙を流しそうになる。イラ立った椿(ツバキ)がジト目でうながしてくる。


「姫様が聞いてるんだ。さっさと答えろ!」

「はいはい。――俺は神楽(カグラ)。『神が楽しむ』って書いて、神楽だよ」

「神楽?」


 名前を名乗っただけなのに、キョトンとする周りの皆。


「ん?」

「どことなく顔立ちがわたくし達と似ていますが……もしかして――」

「その前に、ここってどこ?」

「姫様に敬語を使わんか!! ――貴様は場所すら知らんのか? ここは、和国の北州だ」


 椿がなんだかんだ教えてくれる。


(そうか~。みんな侍みたいだし、そうじゃないかと……。いや、ちょっと待て……?)


「ん? それはおかしくないか? 和国は今、獣界じゃ――」


 神楽がそう言った瞬間。椿から凄まじい殺気が放たれる。神楽は慌てて自己弁護に入った。


「わ、悪かった! 知らないんだよ、本当に!! 俺は記憶を失ったまま中つ国にいたから、この国のことは書籍の記録や伝聞でしか知らないんだ!!」


(だってリムタリスの図書館の蔵書にはそう記載されてたし! 怒るなら書いた奴に頼む! ほんと!!)


 神楽があわあわしてる姿を見て、椿もため息をついて殺気を消した。


「――もういい……。()()私達は負けてない。それだけは忘れるな」

「あ、ああ……。じゃあ、俺らはこれで」


 神楽は踵を返しこの場を離れようとする。クリスと目合わせし、別の場所に向かおうとしたが――



「お、お待ちください!!」

「な、なんでぇ!?」

「姫様っ!! ――貴様っ!!」


 姫様が神楽の服の(すそ)をつかんで離さない。椿はそれを見てなぜだか神楽にキレている。――理不尽だっ!!


「どうかあなた様のお力をお貸しください!! 椿と対等に渡り合える程の腕の和国民など、他にいないのです!!」

「え!? 俺達はただ、海で遭難して流れ着いただけ!! ほんとに!!」


 神楽は自身の危機察知能力がフル稼働しているのに抗わず、なんとかその場を離れようとするが――


「どうか――」

「お助け下さい」

「何卒――」


「お前達……」


 いつの間にか、椿以外の五人が――土下座して神楽に頼み込んでいた。神楽の服の裾をつかむ姫様の手は震えていた。顔は伏せていて見えない。砂浜には、水の雫がポタポタと落ちていた。


「カグラ……」


 どうするの? というようにクリスが神楽に声を掛ける。


「わからないよ、俺にも……」



 困り果てた神楽は姫様の手を振り払えず、ただ空を見上げるのだった。



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