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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第五部 “和国・北洲の戦い”編①
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【第五部】第十ニ章 少女と椿

――和国(わこく)北州(ほくしゅう)・北部結界石――



「………………」


 草木が鬱蒼(うっそう)と生い茂る中、一人の少女が、薄青く輝く大きな石の前で手を合わせている。その身に(まと)うきらびやかな装束は和国特有の着物であり、そのつくりの良さははた目にも伺える。


 長い黒髪を背に流す少女は瞑目し、ただ一心に目の前の石に“祈り”を捧げていた。やがて、石が一際強い輝きを放つ。光が静まった後は、前よりも石の放つ輝きが強まっていた。


 少女が目を開ける。すると、それまで少女の様子を後ろで黙って見守っていた(はかま)姿の女性から声が掛かる。


「お見事です。姫様」

「これで、次の“鬼月(きづき)”――来月まではもつでしょう。ですが……」


 少女が眉をひそめて目を伏せる。


「ご安心ください。“姫様は”必ずお守りします」


 黒い長髪をポニーテールにして背に垂らす袴姿の女性が顔に笑みをたたえて少女に告げる。腰に差す立派な刀の(かしら)――(つか)の先端――を手のひらで軽く叩いて見せ付けるようにして。


――“妖刀五代目村正(ムラマサ)不知火(シラヌイ)】”


 和国で最も優れた刀匠と名高い村正の最期の作品であり、“天下一品”の誉れを思うがままにする刀だ。それを託されるこの女性こそが、ここ和国北州の“人界軍最強”と称される侍――椿(ツバキ)だった。


 少女はにっこりと椿に笑みを返す。


「椿にそう言ってもらえるなんて、わたくしは和国一の果報者(かほうもの)ですね。ですが――」


 少女は笑ったまま、困ったように少し眉尻(まゆじり)を下げて言う。


「わたくしは逃げられません。皆が最期まで戦うのなら、わたくしも共に――」

「なりません! 姫様達は我らが最後の希望! そのようなこと――」


 そんな、少女と椿が言い争いになりそうな時だった。



「誰だお前達は!!」

「神獣!? ――しかも妖狐だぞ!?」


「怪しいもんじゃ――怪しいかもしれないが、敵じゃない!! 落ち着いてくれ!!」


 少し離れた海岸部から、仲間の不穏な怒号が聞こえてくる。それに答える男の声は聞いたことがない。


 少女と椿が顔を見合わせる。


「姫様。見に行きましょう。私から離れずに」

「え、ええ……」


 戸惑う少女を連れ、椿は雑木林を抜けて海岸部に向かう。やがて、たどり着いた先には――



 銀髪の見慣れぬ衣服の少年と、その背後に隠れて顔を出す、頭に狐耳をつけた少女。そして、異人と思われる金髪セミロングの少女が、仲間達と相対していた。



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