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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第五部 “和国・北洲の戦い”編①
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【第五部】第十一章 問答

――帝都城内・謁見の間――


 再び謁見の間に静寂が満ちる。今度はS―01の発言の意図が読めずに考え込む者達の沈黙も含まれていた。


 皇帝が口を開く。


「続けろ」

「今言った通りだけどね。今回僕らが“中つ国”から追い返されたのは、人間と妖獣の力が想定以上だったからじゃない。“その仲を取り持つイレギュラー”がいたからだよ」


 S―01がそこまで言うと、興味を持ったのか、皇帝の眼に力がこもった。


「人間と妖獣の仲を取り持つ……だと? 半妖の集団か?」

「いやいやそうじゃない。――元々和国にいた人間達だよ。“御使いの一族”とか言うね。――ね? 博士?」

「そ、そうです! その者達に邪魔されたのです! 人間と妖獣は中つ国でも元々不仲で、こちらの仕掛けにより戦乱が起こせそうなところで奴らに邪魔されたのです!! アレが無ければ、決して――決してこのような事態にはならなかったでしょう!!」


 S―01に話を振られ、ここが“処刑”の境――地獄の釜に垂れる一本の糸だとでも言うように、博士は必死に弁明する。


……余りに必死過ぎて周りは若干引いている程だ。


 皇帝はアゴに手を当てて考え込んでいる。礼儀的によろしくはないだろうと思いつつも、バージニアは発言を求めた。宰相に認められ、S―01と博士に問う。



「人間と妖獣の仲を取り持つ――“御使いの一族”と言ったな? なぜそれが、“お前でないと勝てない”んだ?」


 純粋な戦闘力には自信があるバージニアはそこに興味を持った。S―01に下に見られているのだろうなどはどうでもいい。単純に、相手の“力”に興味があった。


 S―01は満足げに頷いた。


「それは奴らが、“妖獣の門を借りられる”からさ。妖獣や特殊な能力に目覚めた人間達――神族、魔族もかな? とにかく、それらが門を通じて力を得ている。ここまではいいね?」


 バージニア自身の持つ力もそうなので、黙って頷いた。S―01は続ける。


「気持ち悪いことにさ。奴らは、“妖獣と絆を深めることで、その門を借りられる”。中でも、僕が一度倒したS―03は――」

「そう! あの子です! “処分”したとは言え、あの子さえいなければこんなことには!!」

「……クエイター博士。余りに見苦しければ、すぐにでも首をはねるぞ? ――続けろ」


 皇帝はバージニアと同じ様に眉間にシワを寄せる。疲れているのだろう。バージニアにも気持ちはよくわかる。続きを促されたS―01が話を続ける。


「まぁ、博士が処分したって言ってるけどさ。“御使いの一族”の中には、“神獣”複数体の力を同時に行使する化物もいるのさ。そのS―03のことだけどね」


 自信家のS―01が他人を誉める――化物と評価する――ところなど初めて見たバージニアは驚きから目を見開く。


「神獣……とやらの実力は?」

「そこはピンキリ。強い奴なら、魔族とも戦えるんじゃないかな?」

「――それ程か」


 それ程の力を複数同時行使となると、確かに強敵だろう。皇帝も興味を持ったようだ。


「なるほど……面白い力だ。――そうか。“お前でしか”と言うのは、そう言うことか……」

「そういうこと♪」


 何やら皇帝は納得してしまっている。バージニア達は知らないS―01の特殊能力でもあるのだろうか。気になるが、他人の能力の詮索はマナー違反なので、グッと堪える。が――



「どういうことです? 君に、“私達には無い力”があるのかね?」

(聞いたぁ~っ!?)


 バージニアの右隣――テネリから声が上がる。元々魔導の求道者でもあるため、彼も“力”に興味があるのだろう。そして、皆も気になるのか、誰も咎めない。


(これでは、マナーを意識して聞かなかった自分がバカみたいではないか!?)


――なんとなく、真後ろにいる副長から生暖かい視線が背に注がれているのを感じる……。



「まぁ、別に隠してる訳じゃないからいいけどね。僕の力は“相手の門を閉じる”。――どう? 奴らの力に対抗するにはピッタリだろ?」


 S―01の発言でバージニアは全てが腑に落ちた。


 何故、S―01がこれ程傲慢なのか。どれ程の力を隠し持っているのか。


――“相手の門を閉じる”。


 そんなバカげたようなズルくさい能力があるのなら、確かに今まで敵を圧倒できたことだろう。もしかしたら、魔族相手にも有効かもしれない。


 普段は全くバージニアに縁の無い、“嫉妬”の炎が燃え上がる。そして、“更なる力への欲求”も。S―01だけではない。“御使いの一族”のS―03とやらも、自分より高みにいたのかもしれない。まだまだ精進しなければ!


 そんな闘志を燃やすバージニアを、S―01が若干引きながら見ていた。


(都合がいいから『僕以外は無理』とは言ったけど。あんたならあいつと対等以上に戦えると思うけどね……怖い怖い。こっちは、“向上心の化物”だね)


 S―01は我知らず、仮面の上から頬をかく。


 その後しばらく問答は続き、やがて、皇帝が話をまとめた。



「よかろう。処分は見送る。――但し、今まで以上に働き成果を出せ」

「もちろんだよ」

「か、かしこまりましたぁ!」


 バイオ研究部門の全員――S―01は除くが――が礼を取る。



「では、今後の帝国の取るべき動きについて――」


 宰相が再び進行を司り、次の議題に入る。



 この場の誰も、S―03――神楽の死亡を疑ってはいなかった。そして舞台は、“和国”へと移る。



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