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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第四部 “世界の仕組み”編
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【第四部】第五十七章 奴らはどこから

 謝礼の受け渡しが済むと、しばらくしてその日はお開きとなった。これからのことについては、日を改めて明日会議で決めることに。


 皆、迎賓館に案内され一夜を過ごす。稲姫、琥珀はその館の豪華さに大はしゃぎで、夜も豪華な食事に皆で舌鼓をうった。


【翌日】

――央都(ヤンドゥー)・城内・応接の間――


 翌日、皆が昨日と同じ城の応接の間に集まった。今日は昨日と違い、食事などは必要最小限に置かれ、代わりに会議机と椅子が運び込まれていた。


 如何にも、“これから真面目な話をします”との意志が読み取れる。皆そのつもりで来ているので誰からも否やは無かったが。――琥珀や稲姫は食事に期待していたのか、若干残念そうではあったが。


 皆が集まり着席すると、昨日取り仕切っていた男が再び現れ、皆の前に出た。


 昨日、あの後知った話なのだが、男はまさかの“宰相”だった。そんな偉い立場の人間が宴の進行をしていたとか、後からながら驚いたものだ。宰相は着席した皆を見回してこう切り出す。


此度(こたび)の件、そしてその前に引き起こされた戦乱の件、いずれも“帝国”が関与しているとのこと。我々は、もはや人間と妖獣でいがみ合っている場合ではございません。帝国に対してどう相対するか、これからの我々の在り方について議論をしたく、本日は皆様方にお集まり頂きました。忌憚(きたん)無い意見をお聞かせ願います」


 宰相の仕切りで会議が始まった。



「概ねの経緯は、ここにいる者なら皆承知しているじゃろ。早速、本題に入ろうではないか。――奴らは、どこから来てどこに去った?」

「? だから、東の海を渡った先の帝国だろう?」


 まず口を開いたのは朱雀だった。奴ら――“マスカレイド”の所在についての確認だ。皆の疑問を代弁するかのように白虎が返すが―― 


「地続きではないのじゃ。どこから入り込み、どうやって脱出したのかを問題にしておる」

「!? 確かにそうだ! 青龍、わからないか?」

「我は、聖域で奴らに襲われてから、ずっと捕らわれていたからな……済まないがわからん」


「それは僕らも気にしてた。船で来たなら、やっぱり沿岸部だと思うんだ」

「そうですね。“獣界”ですし、調査できていません」


 朱雀、白虎、青龍、隼斗、ヴィクトリアがどんどんと話を進めている。



――マズイ。スゴく気まずい!


「ご主人?」


 琥珀が違和感に気付いたのか呼び掛けてきて、皆が神楽に注目する。神楽は意を決して皆に向かい語り出した。



「えっと……ごめん。伝えるのが遅れたんだけど、この大陸の北東部沿岸にある洞窟に、船を巧妙に隠してたとか、なんとか……」


 場を沈黙が満たす。どこか、呆れも混じってのため息も。


――スゴくいたたまれない!


「――――何故、黙っていた?」

「い、いや、黙ってた訳じゃないよ? ただ――」


 白虎の問いもどこかトゲトゲしい。


 忘れていたとは言いにくい。


――とにかく、皆の視線がとにかく痛い! やめて! つらい!


 とあるテーブルから特大のため息が漏れた。



「はぁ。忘れてたんでしょ、どうせ。それに、()()()は長い間昏睡してたみたいだから、その間に奴らも逃げてたでしょ」


 声の方を見ると、“宵の明星”の座るテーブルからだった。あの、いつも無駄に絡んでくるクレハが神楽を擁護していた。信じられない光景に、皆がクレハを見つめる。


「な、何よ?」


 クレハは若干照れくさそうだ。後を隼斗が引き継いだ。


「そうだね。クレハの言う通り、どちらにせよ取り逃がしてたんじゃないかな。でも――」

「ああ。すぐに手の者を確認に向かわせる」

「俺の手の者も向かわせよう」


 隼斗に視線を向けられた青龍が、確認のためすぐに部下を現地に向かわせることを請け負う。白虎も探してくれるようだ。白虎達は“共感覚”により、念話同様タイムリーに連絡が取れるので、スゴく心強い。


「神楽よ。もう伝え忘れてることはなかろうな?」

「あ、あぁ。――たぶん」


 朱雀がジト目で見てくるので居たたまれなくなるが、今回は自分が悪いので仕方ない。



「ふむ。船か……。どうだ? “我々も向こうに行ってみないか?”」


 そして、今まで黙って考え込んでいた曹権の口から、そんな爆弾発言が飛び出した。



――そしてそれが、期せずして神楽達に大きな試練をもたらすことになる。この時この場にいる誰にも、それは知る由も無いことだった。



【第四部・完】

次話から第五部となります。

シリアスな展開になりますが、温かく見守って頂けましたら幸いです。

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