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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第四部 “世界の仕組み”編
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【第四部】第五十二章 クリス

――央都(ヤンドゥー)・城内地下牢前――


 あっという間の戦いだった。Sナンバーズの中でも汚れ仕事に特化し、今まで任務をしくじったことは聞いたこともないS―09が赤子の手をひねるように刹那に無力化されてしまった。


(これが人間の中でもトップクラスの実力者……伊達じゃないわね。私にも、これくらいの力があれば、()()()を助けられたのかな……)


 二人の戦いを牢屋の中から格子ごしに見ていたS―03――クリスは内心ため息をつく。もう終わったことだ。考えても仕方がない。だが、やはり考えずにはいられない。


(そう言えば、()はどうしたのかな……)


 研究施設で自分と戦った少年。()()()()()()()()()。薄れゆく意識の中で『ソフィアを助けてあげて』と後を託した。自分を完封した彼ならば、あるいは……。


 クリスがそんな物思いに(ふけ)っている時――



「あ、刹那! 無事だった!?」

「問題ない」


 黒いドレスに身を包んだ少女が刹那に走り寄ってきて怪我が無いか周囲をグルグル回って念入りに確かめている。


 されている刹那の方はいつものことで慣れているのか、全く気にした素振りを見せない。既にS―09の拘束は済ませているが、新たな刺客が来ないとも限らないので警戒を解いていないようだ。


 そして、更に来客がある。



「へ~……。これが、“魔素遮断壁”かぁ。確かに、この空間からは魔素が排除されてるな」

「うちらは<肉体活性>みたいに“気”を使うから、問題なく戦えるにゃ」


 聞き覚えのある声にクリスの心臓が驚きで跳ね上がる。近くにいた黒ドレスの少女が怪訝な顔でこちらを覗き込んでくるので、慌ててそっぽを向いた。顔は伏せる。


(嘘!? どうしてここに!?)


 “自分を助けに”ということは、無いとは思うが心のどこかで期待してしまっている。あの時、敵として戦っただけだというのに、意味不明の馬鹿らしい期待だ。自分でもよくわかっている。


――だが、ソフィアの“好きな”少年には自分も興味があった。



『カグラはね! あたしのヒーローなの!! 絶対、助けに来てくれるんだから!!』

『そうなんだ。いいね、そういう人がいて』

『クリスにだってできるよ!!』


 “あの世界”でソフィアは楽しそうにそう話していた。――そう。名は“カグラ”と言ったか。


 記憶が蘇ってくる。楽しかった大事な思い出に、ふと口元が緩んでニヤけてしまう。


 すると、いつの間にか当の神楽が牢の目の前にまで来ていてこちらを覗き込んでいた。



「無事か? ――っと、何だ、元気そうじゃん」

「ご主人! また鼻の下を伸ばしてるにゃ!!」

「あんたねぇ! 少しは警戒しなさいよ!!」

「ご、誤解だ! 俺はただ、『笑えば可愛い』と思って――」


 牢の前でガヤガヤと騒がしい。目の前には、やはり思った通りの少年――カグラがいて、黒ドレスの少女や猫耳少女に叱られていた。



 そんな平和な光景がおかしく、クリスはクスクス笑いを抑えられないのだった。



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