【第四部】第四十七章 防衛戦【央都】①
――央都・城門前――
「なんなんだよ、この数は!?」
「敵なら倒せばいいが、これは厄介だな!!」
央都の城付近は大混乱に陥っていた。それもそのはず、民衆が何者かに操られているのか、城に向かって殺到しているのだ。
都に残された“宵の明星”のギルドメンバーであり、クレハのグループメンバーでもあるキースとモルドは、殺到する民衆を軍と共に押し返していた。
◆
事件は真っ昼間に起きた。
『僕らは国王に付いて隠れ里に向かうけど、残りのメンバーは都内で襲撃者を警戒してくれ。襲撃があるとしたら、僕らが央都を去った後だから』
出立前に隼斗が都に残るギルドメンバー皆に告げた台詞だ。クレハは仕方無いとしても、同じグループメンバーのリリカが付き添い組に選ばれて自分達だけ残されたのは不満だった。
『ハヤトが言うからにはそうなる可能性が高いわ。気を付けなさい』
『キースさんとモルドさんなら大丈夫だと思いますが、怪我をしないように気を付けてくださいね!』
クレハとリリカは心配してくれたが、『なら一緒に残ってよ』とは思っていても言えない二人だった。――そしてこれだ。
襲撃があるなら夜だと思っていたために、不意をつかれた。もちろん、他のメンバーと交代交代で収容所や城付近、都内の警備に昼夜あたっていた。軍とも協力していたから、警備に穴は無かったはずだ。
だがやはり、心のどこかで油断はあったのだろう。この厳重な警備を崩すことは不可能だと思い込んでいた。まさか、こんな手段を取ってくるなんて――
◆
【時は少し遡る】
――央都・城門前――
「? おい、なんだお前達は? そんな集団で。――おい、止まれ!! さもないと、叩き返すぞ!?」
「こいつらおかしい!! と、とにかく取り押さえろ!」
門番の二人が異変に気付き直ぐ様応援を呼ぶが、遅かった。集団で殺到する暴徒化した都民により、門を強引に突破されてしまった。
直ぐ様、城内から出てきた兵士達が暴徒を取り押さえるも、次から次に新たな暴徒が門外から殺到し、城は大混乱に陥る。
「出来る限り生かしたまま捕らえろ!! 操られている可能性が高い!!」
「そりゃそうだろうよ!! 明らかに“おかしい”だろうが!!」
城に殺到する暴徒は皆、目の焦点が定まっていない。そして、皆一様に城内への侵入を目指しているのは明らかだった。どう考えても何者かに操られている。それは誰の目にも明白だった。
そして、騒ぎは直ぐに広まりキースやモルド達“宵の明星”のギルドメンバーの知る所となった。
最重要な地下牢前には刹那が控えている。キースやモルド達は他のギルドメンバーや軍と共に、城に押し掛ける暴徒の鎮圧を命じられ今もこうして事にあたっているのだった。
「ちくしょう! やっぱ貧乏クジ引いたじゃねぇか!!」
「愚痴るな! 気が滅入る!!」
城門付近で怒号に交じり、キースの慟哭が響き渡るのだった。




