【第四部】第四十六章 捕虜収容施設への敵襲
――“御使いの一族”隠れ里・神盟旅団本部――
「ほう? 助命とな?」
「絶対女の子にゃ」
「……間違いない」
「もしかして、“あの子”でありんすか?」
「ふむ。じゃが、“金髪の子”は奴らに連れ去られたのではなかったのかえ?」
「――あ! わかったですの! あの時戦った、仮面のお姉さんですの!?」
神楽が「捕虜で一人助命をお願いしたい者がいる」と曹権にうったえ出た結果、一気に場が騒がしくなった。――主に神楽のまわりの女性陣が。
「“英雄色を好む”にしても、随分旺盛じゃな?」
朱雀まで面白そうに入ってきて、神楽は顔を真っ赤にして弁明した。
「ち、違う! そんなんじゃない! ――ピノの言った子だけど、彼女はソフィア――俺に帝国の情報をもたらしてくれた子の友達なんだ。死なせたくない」
ソフィアは帝国についての有力な情報をもたらしてくれた。それを優位に働かせる思惑もあり、彼女の名前を出しておく。
曹権は面白そうに状況を眺めていたが、やがて口を開く。
「可能な限りの情報は得た。本来なら軍の研究施設に送るところだが、其方の此度の働きもある。特別に――」
曹権がそこまで言った所――
隼斗が急に手を上げた。皆が注目する。
「お話中に失礼します。たった今、刹那から<念話>で連絡が入りました。央都と北都の捕虜収容施設が何者かの襲撃を受けていると。恐らくは、奴らの残党でしょう」
◆
隼斗のその知らせに場がざわつく。
「まだ残ってやがったのか!」
「すぐ戻らなきゃ! 刹那達は大丈夫なの!?」
「落ち着きなさい二人とも。何のために都に人員を残してきたと思ってるの。央都には刹那が、北都には葵と紅葉が付いています」
憤り拳を掌で打ち鳴らすガイルと仲間の安否を心配し焦るクレハを、ヴィクトリアが冷静に静める。流石は参謀と言ったところか。葵と紅葉という名前は初めて聞いたが、他のギルドメンバーのことだろう。
だが、隼斗の顔は曇っている。
「だけど、ちょっとやっかいみたいだね。特に央都が。一人、特殊な能力を持つ敵がいて、刹那も苦戦してるみたいだ。僕達も戻った方が良さそうだね」




