【第四部】第四十三章 会合①
――“御使いの一族”隠れ里・神盟旅団本部――
「ふむ……“奴ら”は東の海を渡った先にある大陸から来たという訳か。道理で、こことは異なる技術を有しておるわけだ」
団長や神楽、青龍達が事の経緯を説明し終えると、初めてマスカレイドの出身地を聞いた曹権は顎に手を当て考え込んだ。
北東のマスカレイド研究施設は軍が制圧した。その内情は曹権の耳にも入っているのだ。
この中つ国よりも発達した技術が随所に見られ、“奴らは他所から来たのではないか”との意見は、上層部内での共通見解だった。そして今、それを裏付ける情報が得られたのだ。
「中つ国に来た目的は、有用な妖獣達の捕獲。青龍――殿を奪うだけでなく、人間と妖獣を争わせ、その隙をついて目的を達成しようとしたと」
「やり口が陰湿なのよ! わたし達、なんも関係ないじゃない!!」
隼斗がマスカレイドの目的について改めてまとめると、隼斗の2つ右隣に座るクレハが憤り大声をはり上げる。普段はクレハといがみ合っている――というか、クレハに一方的にからまれている――神楽をして、同意以外無かった。
「此度は奴らに上手くしてやられたという訳じゃの。――人間と余らの仲が悪いのを利用されたのじゃからな」
朱雀の意見にも異論は出なかった。若干、場に気まずさが漂う。曹権が軽く咳払いした。
「それについて、こちらから提案がある。――今までここ中つ国では、人間と妖獣が住みかを二分してきた。それは、先の大戦を踏まえて非接触を徹底した結果だ。人間は“守護長城”内に引きこもり、妖獣は外縁の自然豊かな地に住んだ」
曹権の言葉に口をはさむ者はいなかった。曹権は皆を見回し軽く頷くと話を続けた。
「そして、その中間地点――人界と獣界の境は互いに近寄らなくなった。余計な争いを避けるためにな。だが、奴らはそれを逆手に取りそこにアジトを構えた。だから、予は今後、そこに駐在を設けたく考えておる」
「その必要性は確かにあるじゃろうな。――だが、そこを人間の勢力圏にされてはたまらん。こちらからも手の者を送るがよいか?」
曹権の提案に対し、朱雀から即座に要求が入る。曹権はそれを予期していたかのように即座に頷き――
「うむ。それはまったくその通りだ。――だが、先の戦でお互いに大きな被害が出ている。その憎しみを抱えたまま接触すれば、ふとしたきっかけでまた衝突は起きるだろう」
「それはそうだが……では、どうする?」
曹権の言わんとしていることが分からず、白虎が問いかける。
「駐在を設けるだけでなく、人間と妖獣が交流する場を設けたい。出来れば定期的にな」
曹権は意を決したように、車座の対面に座る朱雀達にそう提案するのだった。




