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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第四部 “世界の仕組み”編
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【第四部】第四十章 歓迎の宴①

――“御使いの一族”隠れ里・広場――


 神楽達は広場に着くと辺りを見回す。広場は既に大勢の住人でごった返していた。


 特等席とおぼしき場所には曹権がいた。里長を始め重役達に囲まれている。その中には、何故か人化した(ミズチ)もいる。大方(おおかた)、歓迎したいからと呼ばれ、断り切れなかったのだろう。


 それを裏付けるように、蛟がこちらに気付き、うらめしげに見つめてきた。――いや、どうしようもないだろう。神楽が気まずげに顔を反らすと、ショックを受けたような反応が感じられた。


「蛟は可哀想にゃあ」

「致し方あるまいよ」


 隣で繰り広げられる琥珀と青姫の会話こそが神楽の心中を語っていた。


「――あっ! あっちにいるでありんすよ!」


 そんなことを気にもしていない稲姫が元気にとある方を指差す。エーリッヒ達がこちらに手を振っていた。神楽達も向かう。



「やぁ。もう始まりそうだよ?」

「……はい。みんなの分、確保済み」

「レインは気が利くにゃあ!」


 料理の乗った皿がいくつも並べられていた。気を使って用意してくれていたみたいだ。神楽は礼を言い、その内の一つを取る。



 その後、間もなくして里長の挨拶と来賓曹権の音頭で宴会が開始された。飲めや騒げやの大騒ぎである。ついこの前蛟帰還の宴をやったばかりだというのに元気なものだ。皆、早速どんちゃん騒ぎを始めている。


 特に騒がしい方を見ると、白虎やガイル、雷牙、ルーヴィアルら酒好き組が、樽ごと空にする勢いで飲み進めている。――大丈夫なのか? あれ?


――というか、この前青龍の眷属達と東都(ドンドゥー)で死闘を繰り広げていたはずの“宵の明星”ガイルだが、妖獣に囲まれているのに全然気にした様子が無い。――赤ら顔で肩すら組んでいる。なんとも剛毅だった。


「ガイルだからね」

「マスター。それで片付けられても困ります。やはり、こうなりましたか……」

「いいんじゃない? 楽しそうだし」


 いつの間にか、隼斗、ヴィクトリア、クレハ――それともう一人、眼鏡の少女が神楽達の近くに来ていた。神楽達も向き合う。



「ここはいい里だね」

「ほんとは隠れ里なんですけどね」


 どんちゃん騒ぎが繰り広げられている周りを見回しながら、隼斗と神楽が笑い合う。


「ホントに妖獣と暮らしてるのね。変なの」

「クレハ。――ごめんなさいね。思ったままを口にしちゃう子で……」

「いいえ、いいですよ。――それに、普通の人の感覚ならそうでしょうし」


 ヴィクトリアは苦労人のようだ。美人過ぎて近寄りがたい雰囲気はあったけど、クレハの無礼を謝ってくる辺り、案外接しやすい人なのかもしれない。


「何よ。皆もそう思ってるくせに」

「ガイルさんはもう馴染んでるみたいですけどね」


 クレハの隣に立つ眼鏡の少女がほんわかした表情でガイル達を見つめていた。思わず神楽はその少女を見つめる。



「あんた! リリカに色目を使ってるんじゃないわよ!!」

「ふぇぇっ!?」

「ち、違う! そんなつもりじゃない!」

「――ご主人?」

「また浮気かのぅ?」

「主様はいつもこうでありんすよ」

「……そろそろ修正すべき」


 女性陣からの総ツッコミが凄まじかった。いつの間にか、リリカと呼ばれる眼鏡っ娘を(かば)うようにクレハが前に出ている。酷い誤解だ! ――それにしても、最後のレインの主張は怖かった。


「やれやれ、罪深いね」

「マスターがそれを言います? この前も――」


 少し離れた場所では隼斗とヴィクトリアも同じようなことをしていた。やぶ蛇だったと隼斗は焦るがもう遅い。日頃のうっぷんがたまっていたヴィクトリアはここぞとばかりに隼斗を追及するのだった。



 騒がしいながらも宴は楽しく進行する。そこには確かに、人と妖獣の共存の姿があった。



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