【第四部】第三十八章 お茶会①
――“御使いの一族”隠れ里・神盟旅団本部・広間――
国王曹権や隼斗達“宵の明星”とのお茶会が始まった。まったく心構えをしていなかった神楽だが、話を振られ、思ったままを答える。
「活躍と言われましても……実際に青龍を取り戻したのは、ルーカス――そちらにいる“宵の明星”ですし」
神楽は博士により脳にダメージを負い、稲姫やピノに治療されていた。あの場にルーカスがいなかったらマスカレイドに青龍をまた連れ去られていただろう。
ちなみに、今この場にルーカスはいない。朱雀達や“宵の明星”のガイルやリリカもだ。今宵開く予定の宴には出席するそうだが、今は自由に行動しているとのこと。うらやましい限りだ。神楽はなぜか付き添いをご指名されたのだから。今目の前にいる曹権に。
だが、指名の意味は思った通り、事件の聴取なんだろう。――まぁ、本人も言う通り、そこまで重い感じではないみたいだが。
淡々と答える神楽だが、ちょうど目の前に隼斗達“宵の明星”がいるので、腑に落ちていなかった事柄を追及する。
◆
「そうだった。隼斗――さん達。ルーカスに俺の後をつけさせたでしょう?」
「ルーカスがそう言ったのかい?」
「ええ」
そう。尾行されているなんて気付かなかった。それは自分の実力不足でもある訳だが、やはり指示したとおぼしき隼斗は非難しておきたい。
隼斗は「ならいいか……」と独り言ちて、話し出す。
「ルーカスには『アレンの後を追ってくれ』とは言ったけど、合流するなとは言ってなかったはずだけど……」
「ええ。私もそう記憶しています」
「あんた、ルーカスに避けられてるんじゃないの? それか、囮にされたとか。やーい! 一緒に暮らしてたとか言う割には信用ないんだ?」
(た、耐えるんだ俺……。このガキンチョの挑発に乗っちゃダメだ)
神楽はこめかみに青筋を立て頬をひくつかせながらも、何とかクレハをスルーした。そして、隼斗の意見を吟味する。
「なら、ルーカスの判断でか。一緒に行動するよりも動きやすい……か。――ルーカスらしい」
面倒臭がりは相変わらずのようだ。神楽はふと笑みをこぼす。それを見たクレハは目をパチクリとさせていた。
そして、今まで黙っていた曹権が口を開く。
「ふむ。君は彼の――養子だったか。その話も聞きたいところだ。差し支えない範囲で構わないが」
この問いには、“宵の明星”の三人も興味があるようで、クレハですら黙って聞く構えを取っている。
「たいした話じゃありませんよ。行き倒れていた俺をルーカスが拾ってくれて、一年半程一緒に暮らしただけです」
「なぜ行き倒れていたんだ?」
曹権からなおも問いが投げ掛けられる。どこからどこまで話したものかと神楽は思い悩む。
「“奴ら”に色々いじられて、力も記憶も失ったまま、さまよったからですよ」
「奴らと言うのは件の犯行集団か?」
「はい。俺は奴らに囚われて実験体にされていたんです」
そうして、神楽は自分の生い立ちを曹権や“宵の明星”に伝えるのだった。




