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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第四部 “世界の仕組み”編
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【第四部】第三十六章 衣服

――“御使いの一族”隠れ里・神盟旅団本部・広間――



「この様な場所で申し訳ありません。なにぶん、来客を想定した施設は充実していないもので」

「ハハハッ! 構わぬ構わぬ!! こちらの方が新鮮味があってよい!!」


 国王曹権達を隠れ里に迎え入れてからは、そのまま神盟旅団本部へと向かった。今はその広間にいる。


 道すがら、すれ違う住人が頭を垂れるのを、入り口の時と同様、曹権の方から声をかけ面を上げさせていた。


「それにしても、皆変わった装いをしているな。――いや、そうか。“あの時”のままということか」


 気になっていたようで、曹権が里長にそう投げ掛ける。里長もうなずき答えた。


「はい。三年前の亡命時のまま、和国での衣服を(まと)っております。内地の人々との干渉は避けておりましたが(ゆえ)

「ふむ。この国への難民は皆、我々が着ているものに装いを改めたからな。強制した訳ではないが、それもこの地に早くなじむための彼らの決断だったのであろう。今では催事の時に着ていることがあるくらいか?」


 最後の問いは近くに立つ隼斗に向けられたものだった。隼斗もうなずき答える。



「そうですね。私などはエクスプローラーとしての活動のしやすさから今の装いをしていますが、市井(しせい)の人々は陛下のおっしゃる通りでしょう」


 見ると確かに隼斗の装いは市井の人々のものとも違った。激しい動きにも耐えられるよう、伸縮性に優れた素材を使っていることに加え、武器や道具を装着しておけるような工夫がいくつも施されている。


 特に隼斗達のものは一点もののオーダーメイドでもあり、エクスプローラーの中でもこれ程のものを手に入れるのは難しい。曹権は『ふむ』と軽くうなずくと、少し離れた場所にいるクレハへと目を向けた。


「彼女のもか?」

「まぁ、特注品ではあるのですが、彼女のは、まぁ少しその……彼女の好みを反映させてありまして」


 隼斗が言いにくそうに答える。


 クレハは黒を基調とした見慣れない様式のドレスを着ている。フリルもふんだんについており、上品さを保ちながらも華やかだ。


 運動性能や戦闘しやすさを重視した隼斗のものと根底にあるコンセプトが違うのは、見るからに明らかだった。


 そんなクレハは神楽や琥珀達と少し離れた場所でやいのやいの言い争っている。隼斗の隣に立つヴィクトリアが小さくため息をついた。


「マスター。クレハを回収してきます」

「そうだね。悪いけど頼むよ」


 隼斗とそれだけ言葉を交わすとヴィクトリアはすぐさま現場に向かうのだった。曹権がそんなヴィクトリアを目で追う。


 ヴィクトリアはワインレッドの華美なドレスを着こなしていた。顔立ちやスタイルの良さも相まって、さながら舞台女優のようだった。普段から美女達を見慣れている曹権をして、目を奪われる程だった。


「ふむ。彼女も見目麗しいな。冒険させておくにはもったいない」

「彼女が選んだ道ですから。――それに、“冒険”は今の人類において、優先度の高い事柄ではないですか?」

「ハハハッ! その通りだ! いや、失敬。つい、別の可能性も考えてしまってな」


 やんわり隼斗が苦言を入れると、曹権も素直に非を認めた。


 この世界での冒険とはすなわち、人類の未到達地域への進出であり、それは、この世界で生息域の狭い人類に取っての悲願でもあった。


 神界や魔界など、魔素の濃さから人間の居住に適さない地域――魔素だけでなく、神族や魔族の脅威もある――が、この世界には多く存在する。


 そんな世界で、人類が安全に住める地域を見つけられれば、それだけ人類は繁栄できる。


 逆に、他の種族に生息域を奪われてしまうこともある。――そう。今は妖獣の支配下にある和国のように。


 一歩間違えれば、この中つ国も和国の二の舞になっていた。それは曹権も認めるところだ。


 それを回避できたのは――


 曹権の目が、迫るクレハを受け流している神楽に止まった。


「少し話がしたいな」

「――ああ。“彼”ですか。そうですね。私も興味があります」



 曹権と隼斗は軽く笑い合うと、神楽達の方へと歩み寄るのだった。



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