【第四部】第二十九章 “宵の明星”の謁見
――央都・城内・謁見の間――
隼斗とヴィクトリアはルーカスからの念話を受け、国王曹権に事情を伝えるため、央都城内の謁見の間に来ていた。
今回の終戦の立役者でもある“宵の明星”の働きは国中に知れ渡っており、隼斗が国王に会いたいと申し出るだけで、簡単に面会が許された。
「よく来てくれた。此度の働き、実に見事だった。主犯を取り逃がしたのは残念だったが、“宵の明星”のおかげで青龍の奪還、主犯主要施設の制圧、いずれも相成った。感謝してもしきれんよ」
「いえ。“協力者”の存在あればこそです」
曹権から改めて送られる称賛を、隼斗とヴィクトリアはその場に跪きながら受ける。
「報奨は追って渡すつもりだが、今は戦後処理に追われていてな。今しばらく時間をくれぬか? 其方の言う“協力者”達にも送らねばな」
神楽達のことは隼斗から軍の上層部にも伝えてあった。負傷したため今は療養中だが、“宵の明星”と共に今回の終戦の立役者だというのは、軍上層部内では既に知れ渡っているのだった。
――“人間と妖獣の混成部隊”。
初めて聞かされた者はさぞかし度肝を抜かれたことだろう。今回、まさにその二種族が対立し戦い争ったのだから。
そのようなデリケートな事情故、神楽達のことは軍上層部内に情報をとどめてある。民衆に知れ渡れば無用な混乱が起こるのは容易に想像できる。上層部内にも否やは無かった。
同様にして、制圧した主犯の地下施設についても情報は秘匿されている。いや、民衆だけではない。これは軍上層部内でも知る者は限られた。
あまりにおぞましい研究がとり行われていたため、重要機密として押収され厳重に管理徹底されているのだ。
“捕虜”も同様だ。生きている者は、他殺も自害もできぬよう、複数箇所に分けて収容し徹底管理している。“人型”も“妖獣型”も。
人間や妖獣と呼ばないのは、人為的に造られた――もしくは後天的に変化を加えられ、その種族そのままの名で呼ぶことがはばかられたためだ。――それが、“あそこで行われていた研究”の実態を表していた。
「その協力者が目覚めたようです。先程仲間から連絡がありました。そして今は、“四神獣”や協力者の部族を交えた、今回の件の情報共有中とのことでして。私達が陛下のもとにこうして参ったのは、向こうから『今回の当事者である軍も一緒にどうか』と打診が来たのを陛下にお伝えするためです」
隼斗は曹権に事の次第を伝えるのだった。




