【第四部】第二十七章 煽り
――“御使いの一族”隠れ里・神盟旅団本部――
神楽の発言で場が『し~ん』と静まり返る。ソフィアから聞き知ったことを伝えただけなのだが、やはりいきなりでは理解が追い付かないのだろう。
「あ~……アレン――じゃなかった、神楽。ちょっといいか?」
「? どうぞ」
ルーカスが眉間の辺りを指でほぐしながらもう片方の手を挙げていた。神楽が続きを促す。
「過程も説明してくれ。それは、奴らの研究施設で聞き知ったことで、失ってた記憶を思い出したってことか?」
「違うな。俺を助けてくれた恩人の子から聞いた話だよ。彼女は、そのヴィシレ帝国で奴らに捕まって連れられてるから背景を知ってたんだ」
そこまで伝えると、やっと皆が納得を示すようになった。だが――
「その少女が嘘をついている可能性は?」
「理由がありません」
「まぁ、確かに……。だが、確証も無い。伝聞ではな」
一部の重役達から情報の真偽を疑う問いが投げ掛けられた。
イチャモンをつけられていると感じ、神楽としては面白くない。特に、『ソフィアが嘘をついている』なんて言われては。
(ソフィアのこと、何も知らないくせに)
自分が逆の立場だったらその疑いに理解を示せたとは思うが、神楽は語る側であり、それに無理して信じてもらう必要も感じなかった。
「なら、私からは以上です」
「神楽。お前も神盟旅団員なら――」
「まだ在籍してたんですか? とっくに殉職扱いだと思ってました」
売り言葉に買い言葉。我ながら子供っぽいとは思うが、気に入らないものは気に入らない。
我慢して尽くす必要も感じないので、さっさとオサラバしたかった。
なおも重役が神楽に物申そうとしたところ――
「よさぬか見苦しい!! 客人の前だぞ!!」
団長から大喝がとんだ。重役達が言葉通りとびはねる。
「疑ってかかっては話が進まんだろう! ――神楽、お前もだ!! 『面倒だから煽って追い出されよう』というのがバレバレだ!!」
別にそんなつもりは……少ししか無かったんだがな。――まぁ、自分も子供じみていることはわかっているので「すみません」とだけ答えておく。
そんな時――
◆
「――く、くくっ……! 堪えられん! 神楽、其方はもう少し感情を抑える術を身に付けるべきじゃな」
朱雀が肩を揺らして笑っていた。――面白くない。神楽は唇を尖らせた。
「まぁ、その正直さが其方の美徳でもあるから余は構わんがな」
「それで神楽。奴らの目的はなんだ? 妖獣と人間を捕らえ、研究する目的はなんだ?」
白虎が話を戻しにかかる。神楽は白虎にうなずき、続きを語り出す。
「奴らは戦力を欲している。ピオニル大陸は人界と魔界からなるが、魔族に対抗するためだ。“人間と妖獣の融合による戦力の増強”。それが奴らの目的だ」




