【第四部】第二十一章 朱雀達の来訪
――“御使いの一族”隠れ里・広場――
家を出ると大騒ぎになっていた。先程念話で聞いた通り、来たのは三名だった。
朱雀は巨大な妖鳥の姿で、後二人は人間の偉丈夫――いや、人化した白虎と青龍だろう――が、今まさしく朱雀の背から降りてくるところだった。
集落の他の住人もなんだなんだと集まってきている。朱雀は目立つからな。それに、一応ここは隠れ里だし。急に妖獣が乗り付けたら驚くというものだろう。
神楽達が近付いていくと、朱雀も気付いた。まばゆい光にその身を包むと、中から妙齢な美女が現れる。
「無事なようで何よりじゃ」
「そっちこそ、青龍が無事解放されたんだな。よかった」
「お前が神楽か。世話になったようだな」
青髪の偉丈夫がこちらに歩み寄ってくる。なるほど、こっちが青龍か。
「直接取り戻したのはこっちのルーカスみたいだけどな。まぁ、無事で何よりだ」
名を呼ばれたルーカスが歩み寄ってくる。
「そうだったか。世話になったな」
「いや、元はと言えば、変わった奴らとは言え人間側がしでかしたことだからな。迷惑をかけたな」
ルーカス、珍しく殊勝だった。やはり、相手が相手だけに慎重なのかもしれない。大物過ぎるからな。
「こんな所で立ち話もなんだ。急だったからたいしたもてなしも用意できてないが、うちに来ないか?」
「うむ。お邪魔するとしよう」
朱雀はその美貌で住人の男衆の視線を釘付けにしていた。女衆からは羨望のまなざしが向けられている。
目立って仕方ないから、早めに引っ込むのが吉に違いないだろう。神楽はさっそく三人を家に案内する。
◆
――春・楓の家――
「たいしたもてなしもできませんが……」
「うむ。構わぬぞ。こちらこそ、急に押し掛けて済まぬな」
春がお茶と菓子を居間に運んで皆に配る。朱雀はさっそくおせんべいをパリポリかじっていた。
白虎は珍しげに眺めていたが、朱雀が食べるのを見て食べ始めた。うまいとわかったのか、スゴイ勢いでむさぼっている。
青龍はお茶のついでにつまむ程度だ。妖獣界の大物三人だが、見事に性格が違うのだった。
「それで、俺に会いに来たって言ってたけど――」
「そうじゃ。余が会いに行くと言ったら、こやつらも来ると聞かなくてのぅ」
朱雀は白虎と青龍を見回す。
「それはそうだが、朱雀。他に言うことがあったんじゃないのか?」
青龍がうながすと、朱雀は目をパチクリとした後、手を打つ。
「そうじゃった!! ――神楽、朗報じゃ! 其方の旧友――蛟じゃったかをこちらで預かっておるぞ。聞いていた特徴と一致しておるし、おそらく間違いあるまいよ」
「本当か!?」
「蛟にゃ!?」
「おお! ついに見つかったのかえ!?」
「よかったでありんす!!」
神楽達がいっせいに騒ぎ出す。やはり皆、気になっていたのだ。蛟の行方がわからなかったことに。
「うむ。だからそれを知らせに来たのじゃ。今は洗脳を解いて休ませてるところじゃが、どうする? すぐに行くか?」
「でも、来たばかりで悪いよ」
「気にするでない。――あ、こやつらは置いていってもよいか? さすがに全員を乗せるのはつらい」
「わかった。俺、琥珀、青姫、稲姫で頼む」
「わらわは自分で飛ぼう」
「ピノも行くですの!」
ピノも付いてきたがってるので一緒に行くことに。
思わぬ朗報で場が一気にわきたつのだった。




