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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第四部 “世界の仕組み”編
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【第四部】第十六章 今度こそ

【そして時は戻り、現在】

――黄昏の世界――



「ずっと……ここで待っててくれたのか?」


 聞くと、ソフィアは笑ってうなずく。


「俺は、君との約束を忘れていた。それなのに――」


 なおも懺悔(ざんげ)をしようとする神楽の唇を、ソフィアが人差し指でそっと押さえる。謝罪は必要ないとでも言うように。


「あの時は……そうね。記憶が封印されたばかりなのに色々なことが立て続けにあって、ほとんど理解できてなかったんでしょう」


 ソフィアの言う通りかもしれない。軽はずみに“約束”をしてしまったのではないか。


「ここを出てからも大変だったと思うし。――ごめんね? 右も左もわからない時に一人で放り出して」

「いや、仕方ないよ。それに、そのおかげで今こうしていられてる」


 確かに行き倒れはしたが、ルーカスに拾われ、生きていく術を叩き込んでもらった。学校にも通わせてもらい友達もできた。それに、稲姫達とも再会できたのだ。万々歳の結果だった。


 それに引き換え、ソフィアの方は――



「ずっと……ここにいたのか?」


 ソフィアは黙ってうなずく。寂しかっただろうに。自分が皆と笑い合っていた時にソフィアが一人でいたと思うと、胸が締め付けられて苦しくなる。


「でも、カグラがたまに会いに来てくれたから」


 よく見る“夢”のことを言っているのだろう。実際には、夢でなく無意識下で力を使い、この世界に来ていたみたいだが。


 でも、それも不完全な形だったから、会話をすることすら出来なかったのだ。


「ソフィア。改めて――“今度こそ”約束する。俺は君を救い出す」

「うん、待ってる」


 神楽とソフィアは笑い合うのだった。



「そう言えばさ。S―03に会ったよ。俺の後釜の」

「え? “クリス”に?」


 ソフィアが目を見開き驚いている。そうか。そんな名前だったのか……。


「君のことを『助けてあげて』って頼まれた」

「そうなんだ。元気にしてた?」


――気まずい。ボコボコにしたなんて言えない。神楽は思わず目をそらした。


「――カグラ?」

「し、仕方なかったんだ! 向こうも俺も敵として出会って、行く手を遮られたから! ――たぶん、死んではいない、と思う……」


 ジト目で覗き込んでくるソフィアから全力で顔をそらす。よかった! とどめをささなかったのは正解だったみたいだ。


「カグラがいなくなってから施設に連れて来られたの。あの子も被害者よ」

「そっか……」


 あの施設はほんとにろくなことをしない。


「“あの後”、あたし、ずっとこっちにいたんだけど、向こうの様子も少しだけどわかるの。あの子、眠ってる私によく話し掛けてくれてさ――」

「それはなんというか……いい奴だな」


 ソフィアと面識も無いのにというのは引っ掛かるが。


「家族とあたしを重ねてたみたい。――まぁ、それはいいんだけど、あの子、力に悩んでたから、ちょっと“手助け”してあげたのよ」

「手助け?」


「あたしの力は“世界を越える力”。具体的には、“門”を開いて世界を行き来することができるの。だから、あの子の“門”から入って、“力を引き出してあげた”のよ」

「力を引き出す?」


「そう。よりあの子に適した力を見つけて送ってあげたの。それができるのが、あたしが施設で重宝されている理由。施設では“増幅(ブースト)”って呼ばれてるわ」

「なるほど……それは確かに凄い力だ」


 あの“爆発魔”はそうして誕生したって訳か。


「でもそうね……あの子、S―03まで登りつめたんだものね。よっぽど相性がよかったんだ」


 ソフィアが嬉しそうに笑う。――彼女、どえらい爆発魔になってましたよ……? <結界>が無ければ自分も無傷では済まなかっただろう。そう考えると背筋が寒くなる。


「“力を送る”って……どんななんだ?」


 イメージがわかない。


「そうね。カグラには話しておこうかしら」



 そうして、ソフィアは“力とこの世界”について語り出すのだった。



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