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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第四部 “世界の仕組み”編
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【第四部】第十章 戦後処理

――“中つ国”東の山・青龍の聖域――



「この大馬鹿者めが!!」


 聖域にて青龍の叱咤(しった)が飛ぶ。そのあまりの迫力に、まわりの木々から鳥達が飛び立つ程だった。その叱咤を浴びるは、青龍より一回り小さいが、似た体躯を持つ青嵐だ。


「申し訳ございません、青龍様。青龍様を(さら)ったあげく、人間共がなおもこちらに手出ししてきたので、これは青龍様不在の今、俺がこらしめるしかないと……」

「まんまと“真の敵”に踊らされているではないか! ――まぁ、我が(さら)われたのが原因でもある故、お前だけの落ち度でもないが……。朱雀。それで人間側の動きはどうなっている?」


 自分のせいでもあるかと思い直した青龍は若干気勢を和らげる。しかし、これで人間と全面戦争になると、奴らの思う壺だ。それだけはなんとしても避けたかった。


「実は父上が向こうの大将――曹権だったかに話をつけてきてくれてな。全面戦争は(まぬが)れた。とは言え、奴らに踊らされ人界に攻め入り多くの被害を出したのは(まぎ)れもない事実。そこは――」

「所領をいくらか(ゆず)ったわい。向こうは向こうで、自分達の支配下にないとは言え同類が青龍を攫い、なおも“獣界”に攻め込んだ負い目があるのじゃろう。追加の条件はなかったわ」


 黄龍が愉快そうに笑う。


「あの曹権という男、人間ながら中々見所がある。あれが頭のうちは、人間の方から事を荒立てることもあるまいて」


 父上が言うならそうなのだろう。青龍や朱雀達も納得した。


「青嵐。わかったか。こちらから事を起こした以上、ただで痛み分けとはいかんのだ」

「ですが、元々は奴らが同族を抑えきれなかった失態であるとも……」

「仮に、“和国の妖獣”が海を渡ってこの大陸に入り人間側に被害を出しても、同じことが言えるか?」

「そ、それは……」


 青嵐も渋々ながら納得したようだ。青嵐と同じ理由で人間達に攻め込む準備をしていた朱雀や白虎としては、若干座りが悪い。奴らはただの人間でもなかったわけだが。


 そして、青龍がふと思い出す。


「そうだ。和国で思い出したが、奴らと戦っている時、中々に強い和国の同族もおったぞ」

「ああ。強かったのぅ。余が奴らと戦う時にも参戦され、危うく殺されかけたわ」


 朱雀があの時のことを思い出してだろう。苦々しげに言う。


「ほう。それ程か。――で、倒したのか?」

「いや。父上の力で無力化しただけじゃ。奴らの洗脳は解いて今は休ませて――――あっ!?」


 いきなり朱雀が大きな声を上げ、白虎達が(いぶか)しむ。


「どうした?」

「すっかり忘れておった。おそらくあの龍は、神楽達の仲間じゃ」


――確か、名は(ミズチ)だったか……。

 

 神楽の仲間達に伝え忘れていたことを朱雀は思い出し青龍達に告げる。


「無事其方も復活したし、もうよいか? 余は神楽達のところにあの龍のことを伝えてくる」

「お前が人間を気に入るなんて珍しいな。――どれ。我も恩があるようだし、ちと顔合わせでもしておくか」

「神楽自身はまだ昏睡(こんすい)中じゃろうから、会えぬかもしれぬぞ?」

「それならそれで構わん。“御使いの一族”の隠れ里とやらにも興味があるしな」

「それなら俺も見ておくか」


 青龍と白虎が来たがるので、まぁいいかと朱雀も了承する。


「相分かった。では、早速行くぞ」


 朱雀の合図に青龍と白虎が人化する。


「其方は飛べるじゃろうに」

「我の姿は目立つからな」


――確かに。青龍が飛んで来たら、人間達に要らぬ誤解を与えるかもしれなかった。


「わかった。では、しっかり捕まっておれ!」



 そうして、青龍と白虎を背に乗せ、朱雀は空高く飛び立つのだった。



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