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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第四部 “世界の仕組み”編
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【第四部】第八章  出港

【一方その頃】

――中つ国大陸・北東部沿岸――



「博士。荷の積み込みと研究員達の乗船が済みました。いつでも出港できます」


 中つ国大陸北東部沿岸にある洞窟内。最終点検を終えたS―06が船の甲板上で博士に報告する。


「では直ちに出ますよ!!」


 博士は不機嫌だった。それもそのはず、せっかく奪った青龍が、その封印石を持った研究員達ごと姿をくらませたのだ。


 連絡員が<念話>で研究員達に呼び掛けるが、向こうが接続を拒否しているためだろう。繋がらなかった。


 それを知った時の博士の狂乱ぶりは、それはもう凄まじく、皆を恐怖たらしめたのだった。いつ八つ当たりが自分に向けられるかわからず、ただ無言で嵐が過ぎるのを待ったものだ。


 しかし、今さら後戻りもできないので、本国に帰還するため、沿岸部の洞窟に隠している船へと乗り込んでいるところだった。


 そして、博士の号令でいざ出港せんとしている時――



「間に合った。いやぁ、今回はしてやられたね」


 見知った顔――S―01が船の甲板に降り立った。あっけらかんとした態度で博士やS―06の方に歩み寄ってくる。


 博士の近くにいたS―06は『ぶちぃ!』という博士の血管が破裂したような音を幻聴した。



「お前は! どの面下げて戻ってこれたのですか!?」

「ああ。やっぱりお(かんむり)? 悪かったよ。相手を侮ってたかもね」


 S―01はさもたいしたことじゃないように答えるが、それがさらに博士の機嫌をさらに低下させる。


「『悪かった』で済む話じゃないです!! あれだけ兵を損耗させるなと言っておいたでしょう!! お前だけ帰ってくるとはどういうことですか!?」


 そう。帰ってきたのはS―01ただ一人だった。当初、人間と妖獣を各二百五十手配し、さらに増援で人間を二百送り出していた。


 なのに、帰ってきたのはS―01ただ一人。決して見過ごしていいことではなかった。


「あっちはS―07とS―05の責任でしょ。まったく、お気に入りだった“和国の龍”も貸してあげたのにだらしない」


 S―01は、やれやれというように肩をすくめてみせた。


「お前の読み間違いでしょうが!! ――まったく! 兵を施設から大量に出していたせいで、この大陸の研究施設まで廃棄する羽目になりました!! 大損ですよ!!」

「それはそっちで何とかしてよ。だらしないなぁ」


『あ、これはマズい……』とS―06はその場を離れようとするが、遅かった。博士がS―01を平手打ちしたのだ。仮面の上からだから、逆に博士の手が痛そうだが。


「本国に帰ったら、きちんと罰を受けてもらいますよ!!」

「はいはい。――ただ、そうだな。ちょっと業腹(ごうはら)だな」


 S―01の(まと)う気配が変わる。一触即発なピリピリした感触に、S―06の冷や汗が止まらない。


「いざとなれば、お前を“廃棄”することだってできるのですよ?」

「僕は博士の道具になった覚えはないんだけど? “目的”が一致してたし、都合がいいからここにいるだけだよ」


 売り言葉に買い言葉。S―01が不穏な(さま)で博士に近づくが――


「――まぁ、いいでしょう。今お前を失うのはこちらも痛手です。ただ、本国から下されるだろう罰は受けてもらいます。――私にも下されるでしょうけどね……」


 博士のしょぼんとした態度に毒気を抜かれたのか、今一線を越えてしまうデメリットが割に合わないと考えたのかはわからないが、S―01も態度を改めた。纏っていた殺意が霧散する。


「あまりにも酷い罰だったら出てくけどね。――まぁ、一応反省はしてるんだ。大人しくしておくとするよ」


 何はともあれ、危機が回避されS―06は内心ホッとするのだった。



 そして船は出港する。皆の陰鬱(いんうつ)な気持ちを乗せて。



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