【第四部】第二章 再会
「ああ。聞こえる、ソフィア。――ずっと会いたかった」
「カグラ!」
神楽がそう答えると同時、ソフィアが木の下から走り寄り神楽の胸に飛び込んできた。神楽はソフィアを抱きとめるが勢いを殺し切れず、二人して花畑の上に転がった。
「カグラ! あたしの声、聞こえるのね? あたしが誰か、わかるのね?」
「ああ、聞こえる。それにわかる。間違いなくソフィアだ!」
二人はしばらくの間、笑いながら抱き合っていた。ソフィアの目尻には涙が浮かんでいる。
「何度も“夢”に見たけど、その時はまったく身体が動かないし、しゃべれなかった。それに、ソフィアが何を言ってるのかもわからなかった。聞こえなかったんだ」
「夢じゃないよ。“実際に”会ってたの」
「? どういうことだ?」
ソフィアが神楽の胸元から離れ身を起こした。神楽も身を起こし、ソフィアと向かい合う。
◆
「ねぇ。どこまで覚えてる?」
「俺が記憶を失ってることはわかってるんだな」
「正確には“封じられてる”のよ。“あの子”の能力で」
「“シーラー”……じゃなくて、S―01のことか?」
神楽の問いにソフィアがコクりとうなずく。
まさか、シーラーの能力が人間の記憶にまで干渉できるとは思っていなかった神楽からしたら驚きだった。てっきり、薬物か何かの影響だと思っていたのだ。
確かに、消されたのなら思い出せるはずがない。だって、もうそこに無いのだから。
思い出せる時点で、“封がとけた”と解釈すべきだったのだろう。自分のアホさ加減が嫌になる。――まぁ、わかったところで、どうしようもなかった訳だが。
「仕方無いわよ。あの力はカグラの――いえ、あの世界の常識の範疇にないから」
「どこまで知ってるんだ? あいつの力のこと」
「う~ん……どこからどう話せばいいんだろう?」
ソフィアは顎に人差し指を当てて『むむむ……』という感じにうなっている。困っているようだ。
「色々いっぺんに聞いて悪いな。どこからでもいいから、話しやすいように話してくれ」
「わかった!」
そうだ。聞かなければならないことは山程あるのだ。
シーラーのことだけじゃない。まだ蘇っていない記憶についてやこの場所について。――それに、なぜソフィアがここにいるのか。
「えっとね――」
そして、ソフィアは語り出す。
――それは、神楽の今までの常識を根本から覆す程に衝撃的な内容だった。




