【第四部】第一章 邂逅
「ここは……?」
気が付き身体を起こすと、辺りは薄暗かった。――いや、薄暗闇の中、地平線の彼方がオレンジ色に染まっている。いわゆる、“黄昏時”というやつだった。
いい匂いが鼻腔をくすぐる。ふと、手に触れる感触が気になり見てみると、手の下には花があった。いや、手の下だけではない。辺り一面が色取り取りの草花で満たされている。
その草花達には橙色の光が当たっている。草花だけじゃない。自分の身体にもだ。
光の射し込む方を見ると、大きな広葉樹が一本立っていた。葉がもれなく橙色に淡く発光している。
――美しい、幻想的な光景だった。そして、神楽はこの光景をよく知っていた。
◆
「前によく見た夢……だよな?」
既視感と違和感を同時に感じながらも、神楽は立ち上がる。
――身体は問題なく動く。そして、声も出る。前は出来なかったのに。
「夢じゃないのか? ――そうだ! ここが夢なら“あの子”――“ソフィア”が!?」
神楽は慌てて周囲を見回した。そして――
「カグラ……?」
広葉樹の陰から女の子が現れた。探していた子だ。――ずっと探していた子だった。
金髪の長髪を背に流し、白のワンピースを着た少女――ソフィアが、おそるおそる神楽に話し掛けてきたのだった。




