表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第三部 “中つ国動乱”編
215/494

【第三部】第九十四章 青龍の封印石

――上空――



「危ないところでした……。皆、無事離陸しましたか?」

「はっ! 逃げ遅れはいません!」


 博士の問いにS―06がキビキビと答える。神楽の名を叫ぶ金髪の少女は、薬品を染み込ませた布を口元に当てられ、強引に眠らされていた。少女の眼には涙の筋が残っている。


「何はともあれ、撤退の首尾は上々。――この雪辱は、必ず晴らすとしましょう」


 博士の暗い笑い声が夕闇の空に溶ける。S―06は何も言わず、金髪の少女を見つめるだけだった。


――博士とは別の飛行妖獣の上にて――



「な、何とか無事に逃げられたな」

「“青龍の封印石”は無事か?」

「ああ。ここに」


 一人の研究員が、箱に丁重にしまった赤く輝く大きな封印石を見せた。他の研究員達が安堵の吐息をもらす。


「よかった……なくしてたら、俺らの命がなかったぞ」

「ほんとにな。あのマッドサイエンティストめ……」

「よせ。聞かれたら殺されるぞ! ――それに、俺達だって、やってることは大差ないだろ……」


 研究員達の間に沈黙がおりる。そんな時――


「これか……まったく、危なかったぞ」

「――は?」


 見知らぬ声がする。そして、箱を持っていた研究員の手が急に軽くなった。見知らぬ髭面の男が、いつの間にか箱を手に持ち物珍しげに眺めている。


 意味がわからず、研究員達が呆然とする。


「流石に高すぎるな。俺は、隼斗やチビスケみたいに飛ぶのは上手くないからな。――おい、高度を下げてくれや」


 髭男が何やら要求してきて、ようやく研究員達はハッとして身構えた。


「て、敵っ!?」

「ぶ、武器は……!?」


 焦って身の回りを手探りで探す男達に、髭面の男――ルーカスはため息で返す。


「どうせこのまま青龍の封印石を奪われても殺されるんだろ? なら、このままこっちに来るか? 色々聞かせてもらうかもしれんが、命までは取られないだろ」


 ルーカスが交渉を持ちかけるも、研究員の一人が刃物を抜いて襲いかかってきた。そして――


「――う、うわぁぁっ……!!」


 男はルーカスに蹴り落とされた。この高さだ。ただの研究員が助かる訳がない。残りの研究員達がお互いに顔を見合わせ、ため息をついた。


「よしよし、お利口だ。――じゃ、戻ろうか」


 ルーカスの指示に従い、研究員達は飛行妖獣を操り発着場へと戻っていった。


 それに後から気付いた博士が発狂したのは言うまでもない。



――そうして、青龍が(さら)わられたことに端を発する此度(こたび)の戦乱は、青龍の奪還をもって終わりを迎える。


 マスカレイドにより戦乱を引き起こされ多数の犠牲を出しつつも、すんでのところで全面衝突は回避されるのだった。


 その陰に神楽達の働きが大きかったことを知る者は少ない。


 だが、四神獣をはじめとする妖獣達は、この件を契機(けいき)に、確かに神楽達を“友”と認め、人との今後のありようを再考するようになる。


 小さな一歩でも、確かな“足跡”を彼らはこの中つ国大陸の歴史に刻むのだった。



【第三部・完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ