【第三部】第八十四章 目指すは第一研究室
【サイレンから少し時は遡り】
――研究施設・第三研究室――
第三研究室内で中年男性を<侵食>で支配下に置いた神楽達は、“青龍の封印石”の保管場所を聞き出した。
◆
――“第一研究室”
この広い研究施設内でも特に重要な研究をとり行っている研究室とのことだ。
今いる第三研究室からはだいぶ距離がある。Bブロックを抜け、更にAブロックを抜けた先にあるとのこと。
他の侵入ルートはない。<肉体活性>で強化した身体で壁を外から壊せないかとも考えたが、迎撃設備が数々配備されているらしく、中から突っ切った方が早そうだ。
「なるべく気付かれたくはないが、ここからは時間との戦いだな。敵に気付かれても蹴散らして突破する。全力で進めば距離もそうないだろう。敵が迎撃態勢を取る時間は与えず、迅速にだ」
「シンプルでいいにゃ♪」
「退路は確認しておきましょう。頭に入ってるのとそうでないのでは、有事の際の初動が変わります」
エーリッヒの言うことももっともだ。神楽は中年男性から退路についての情報も引き出した。
「“ソレ”はどうするにゃ?」
「ギリギリまで使おう。操れてるしな」
容赦などない。この研究室でこれ程非人道的なことをしているんだ。自分は丁重に扱えなど、そんな厚かましいことは本人も望まないだろう。
神楽は周りの培養槽を見回す。その、生命への冒涜の所業を。思わず、中年男性をつかむ手に力がこもった。
「ご主人。壊れちゃうにゃ」
「――おっと。気をつけないとな」
<侵食>で支配下に置いている中年男性を前に立たせた。神楽の思いどおりに手足も動かせる。
エグい能力だとは思うが、ここは有効利用させてもらおう。
「じゃあ、行こう。ここからはまず間違いなく戦いになる。みんな、無理して死ぬなよ? だけど、必ず青龍は取り戻す。いいな?」
「我が君は無茶を求めるのぅ。だが、やるしかあるまいて」
「一泡吹かせてやるでありんすよ!」
「全部叩きのめしてやるにゃ!!」
「ここが正念場ですね」
「腕が鳴るぜ!」
「……みんなは私が守る」
「ピノも頑張るですの!」
「青龍様を取り戻す好機です。必ずやり遂げましょう」
青姫。稲姫。琥珀。
エーリッヒ。ラルフ。レイン。
ピノ。猛鋭。
神楽は皆の顔を見回す。それぞれが決意をみなぎらせていた。神楽はそれを頼もしく思い、皆を連れて第三研究室を後にした。




