表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第三部 “中つ国動乱”編
196/494

【第三部】第七十五章  黄龍の力

――南東の森林地帯――


 (ミズチ)の口から、水色に輝くレーザーの如き超高圧水流が発射された。狙い違わず朱雀へと向かう。


 朱雀は未だ重力の檻と氷の束縛から脱しておらず、回避も防御もままならぬまま、ソレを受けるしかなかった。


――そう。受けるしかない()()()()()



 朱雀は覚悟を決めて蛟の放つ水流を見据えていたが――


 それが忽然(こつぜん)と“消失した”。


 いや、確かに水流は発射されたのだ。朱雀はしかとその目で見た。だが、朱雀に届く前に、全て何も無かったかのように消え失せた。


 そして、懐かしい気配を上空に感じる。


 目の前の蛟が見上げる方に朱雀も顔を向けてみた。



 ソレは黄色の龍だった。その体躯は青龍より大きく、纏う覇気は生き物(ことごと)くを(おび)えさせる程(すさ)まじい。


 黄色の龍は蛟が<荒天招来>で発生させている豪雨や突風をものともせず、ただ上空にたゆたっていた。


「何だアレは……」


 S―05は呆然と黄龍を見上げる。


――格が違う。敵うわけがない。


 今朱雀を抑え込んでいるのもやっとなのだ。蛟やS―07の助けが無ければ、それすら叶いもしなかっただろう。


 それなのに、こんな化物が現れては――


 S―05はこの場の判断を求め、S―07の方を見た。



 S―07もS―05と同じ感想を持っていた。人が抗える存在ではないと。


 震える手を抑え込むのでやっとだ。生物としての生存本能が『逃げろ』と告げている。だが、今朱雀を自由にする訳にもいかない。どうすれば――


 S―07がそんな逡巡(しゅんじゅん)をしてる間にも事態は動く。“結末”が、黄龍の方から一方的に与えられた。



 黄龍の手には球状の“石”が握られていた。今、その石が水色に煌々と輝いている。そして黄龍は視線を巡らせると、その石から“二筋の水流”を(ほとばし)らせた。


 水流は、避ける間もなくS―07とS―05に直撃し、直ちに戦闘不能に陥らせた。


 二人の仮面の者が宙に舞い、やがて地表に落下し動かなくなる。


 朱雀を拘束していた重力の檻と氷の束縛が途端に解除された。



 残るは蛟のみ。蛟は黄龍に攻撃をしかけようと幾つもの水刃を造り出したが――


 発射前に全てかき消える。――いや、正確には“黄龍が手に持つ石”に取り込まれた。一瞬のことで、かき消えたようにしか見えなかったのだ。


 そして黄龍は、反対側の手に持つ、もう一つの石を蛟に向けた。すると――



 蛟から赤い何かが溢れ出し、黄龍の持つ石へと吸い込まれた。たったそれだけのことだ。だが、それにより蛟は意識を失ったのか、その場に崩れ落ちるのだった。


 蛟が倒れたことにより地響きが起き、<荒天招来>が解除される。積乱雲は消え失せ、暖かな陽射しが雲の切れ間から幾筋も注ぎ込んできた。


 指揮系統を失った残党は(もろ)かった。あっという間に、力を取り戻した朱雀の眷属達が無力化した。



 こうして、朱雀がほとんど何もしないまま、事態は朱雀達に取って最良の結末を迎えたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ