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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第三部 “中つ国動乱”編
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【第三部】第七十章 好奇心

――東の洞窟付近――


 S―07達は東の洞窟付近で援軍の到着を待っていた。ある者は草むらに、ある者は木陰に、ある者は岩陰にその身を隠した。


 どれ程待っているかを記録している者はいない。その情報を取得する指示を受けておらず、意味も見い出せなかった。


 そうして待ち続けた結果、ついに動きがあった。


 洞窟内に人影が見えた。集団だ。先頭を歩く者は、S―07と同じく仮面を被りローブを纏っていた。彼らこそが研究施設から増援として派遣された援軍に違いなかった。S―07はその身をさらけ出し、集団に歩み寄った。



「この部隊を任されているS―07です」

「S―05だ」


 S―07が名乗りを上げると、端的な答えだけが返ってきた。だが、それで返すべき答えは決まる。


「ではS―05。私より序列の高い貴方に隊長を委任します」

「不要だ」


 当然の事を伝えただけなのに、予想外の返答が来た。S―07は答えに窮する。


「俺は戦闘テストで派遣されている。指揮は命じられていない」

「了解です。ならば引き続き、私が隊長として指揮をとります」


 ようやく理解できた。S―07はS―05達をバラけさせながら引き連れ、より目立たない場所に移動した。



「聞いてはいましたが、二百人ですか」

「好きに使え」


 残存兵力と合わせれば三百近くなる。元より多いくらいだ。


「但し、『失敗は許さない』とのことだ」

「元より私達はそうでしょう」


 S―05が博士の言伝てを伝えるが、今さらだった。任務に失敗すれば“廃棄”されるだけだ。それは今までと同じ。特に感慨もわかない。


「南を攻めるのだったか」

「はい。既に妖獣部隊は南都(ナンドゥー)襲撃に向かっています。私達もすぐに朱雀の住み処を襲いに向かいます」


 今までは同じSランクの者がいなかったので話しかけてくる者もいなかった。だが今はS―05がいて、任務上の会話だが話しかけてくる。S―07はそのことに新鮮な感覚を覚えていた。――いや、それだけではないだろう。


「貴方はよく会話をするのですね。初めの印象と異なります」


 そう。本当に無口で自分からは何一つ言葉を発しない者も中にはいる。――いや、自我を奪われた者などは大抵そうだ。自分達は奪われていないが。


 なので疑問に思い聞いてみた。S―05はそれに気を悪くする訳でもなく、淡々と答えた。


「普段は話す相手もいないが、お前は話ができるようだからな。だから話している」


 自分と同じ感覚のようだ。S―07にも納得しやすかった。


 S―07もS―05も自覚していなかった。自分達が造られた命でありながら、設計者の意図から外れ“興味や好奇心”を持っていることに。



 S―07達は、およそ三百の兵を連れて、南を目指し進軍を開始した。



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