【第三部】第六十五章 東都戦④
――東都広場・外縁部――
硬質な物がぶつかり合う音が幾度となく鳴り響く。その場には、一人の人間の重戦士と、一体の“蜥蜴男”の神獣がいた。ガイルと剛乱である。
◆
「――ハァッ!!」
「ゴアァッ!!」
両者の裂帛の気合いがぶつかる。そして、バトルアックスと強靭な爪の激突で鈍い音を響かせていた。何度目になる応酬だろうか。幾度も繰り返されつつも、決着はつかない。
「まったく! タフな蜥蜴野郎――だぜっ!!」
「お前こそな! 硬いじゃないか!!」
両者とも笑みさえ浮かべている。この状況を楽しんでいそうだ。初めは両者とも配下に見守られながら交戦していたのだが、そのうち呆れてか、配下達は別の場所に移ってしまった。
いや、実際のところは、ガイルと剛乱の戦いが豪快すぎて、周囲にまで余波が来て危ないので移動したのだった。壁や地面がボロクズのように破片を散弾にして飛ばしてくるのだから、それも致し方無いだろう。
配下達は離れた別の場所で今も戦っていた。そして、この場での戦いも今なお続く。
◆
「<重撃>っ!!」
<豪撃>、<金剛>、<瞬迅>の基本武技は当たり前として、ガイルは更なる武技を発動する。
――<重撃>
シンプルにして、使う者次第で如何様にも威力が変わる基本武技だが、ガイルのそれは一味違った。極限まで高めた身体能力により繰り出される一撃は、鉄の鎧すら豆腐のように叩き潰す。
今も確殺の一撃として、剛乱の頭上から振り下ろされた。
「フンッ!!」
剛乱は襲い来るバトルアックスをまたも“受け止めた”。両手に生える鉤爪をクロスさせて受け止めている。
――<龍鱗>
硬いのは爪だけではない。全身の表皮を一時的に龍と同等の強度にまで高める固有技能も駆使している。更に――
――<肉体強化>
人間の扱う身体強化系武技と似た技能だが、体内の気を操作して身体全体の強度を飛躍的に向上させている。龍鱗と肉体強化を併用するだけでも恐ろしい程の肉体強度を誇っていた。
バトルアックスを受け止めた剛乱はビクともしないが、その凄まじい荷重により地面に剛乱の足が埋まる。剛乱が鉤爪を振り払うと、逆らわずにガイルは距離を取った。
「今度は俺から行くぞ!!」
「来いやぁ!!」
返礼とばかりに今度は剛乱が猛烈な勢いでガイルに襲いかかる。この戦場には両者の楽しそうな笑い声が響き渡っていた。




