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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第三部 “中つ国動乱”編
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【第三部】第五十二章 戦乱の火種

――“中つ国”北東部――


 中つ国北東部。人界と獣界の境に広がる寂れた荒野。その地下には“マスカレイド”研究施設があった。ひとけの無い荒野には人以外でも動物などの生き物の気配は無い。その無人の地表に、今、怪しい集団が姿を現していた。


「それじゃあ、指示した通りに。くれぐれも抜かりなくね」

「承知しました」


 仮面を付けた少年――S―01は、連れて来た部下達にそう告げる。返事をするのは、各部隊のリーダーだ。中には、少年と同じく仮面をつけている者もいた。


 S―01。神楽達が呼ぶところのシーラーの計画はこうだった。



 人間と妖獣を争わせるため、人間には妖獣を、妖獣には人間をけしかける。軍備をほぼ整え終えているくせに、何故か妖獣が人間側に攻め込まない。内部に潜り込ませている諜報員の話では、待機指示すら出回っているとのことだ。


 怖気づいたにせよ、別の理由があるにせよ、このままでは面白くない。だからシーラーは、博士の許可を得て兵員を借り、両者をすぐにでも争わせるべく、火種を作るのだ。


(まったく手のかかる。青龍を奪えばすぐだと思ったんだけどね。拍子抜けだよ)


 シーラーはため息をつきつつも、計画を練り上げた。


 博士から借りた兵数は、人間と妖獣、それぞれ五百。その全てが、マスカレイド所属の者だ。


 自らの意思で属している者もいれば、“従わせたり”、“従順な兵士として造った”者もいる。


 共通して言えるのは、上位命令に逆らえず、従順であるということだ。シーラーにとって、彼らはすべて、“目的を果たすための道具”に過ぎなかった。なので、力が有り従順でさえあれば、それで構わなかった。



 兵は四部隊に分けた。人間のみで二部隊。そして、妖獣のみで二部隊だ。その部隊分け指示を出した際のシーラーの発言は次の通り。


「まずは北と東だ。同時にしかける。妖獣部隊は二手に分かれて“人界”の“北都(ベイドゥー)”と“東都(ドンドゥー)”を。人間部隊も二手に分かれて“獣界”の“玄武”と“青龍の眷属達”がいる住処を攻めるんだ」


 その指示で、総勢千の兵が、各二百五十の四部隊に編制された。


「人間には妖獣が、妖獣には人間が攻めているよう見せかけるんだ。内部に潜り込ませている諜報員も好きに使ってくれて構わない。あと、人間の部隊は、内部から調達している軍服を着用した兵を先頭に出すこと。軍が攻めてきたと思わせるんだ」


 あらかじめ、内部に潜り込ませた者を使い、軍服をこちらに横流ししてある。それ程数は無いが、妖獣達の目にとまればいい。編成した人間の部隊には、それぞれ数十人の軍服を着た兵士がいる。


「あくまで目的は、それぞれに敵が攻めてきたと思わせることだ。ある程度戦ったらすぐに退くこと。その後は、北の部隊は西に、東の部隊は南に回り込んで同じことをする。奴ら――この大陸の人間と妖獣が争い出したら成功だ。その段階になったら、追って指示する。両者が戦ってる隙に、妖獣を間引くことになるね」


 シーラーは“封印石”を取り出して見せる。これは各部隊にもある程度の数、持たせてある。これで妖獣を持ち帰る算段だ。


「じゃあ、早速行動開始だ!」



 シーラーの合図を契機に、それぞれの部隊が行動を開始する。今、中つ国に再び戦乱の火種が撒かれようとしていた。



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