【第三部】第四十六章 行動予測
――東都“宵の明星”ギルドホーム――
ギルドホームのロビーで、隼斗とクレハは、今は遠くにいるギルドメンバー達と<念話>をしていた。
(そのアレンが言うには、東に抜けて、“とある集団”を探しに行くんだとか)
(なんだよ。その曖昧な情報は)
ルーカスから呆れたようなため息が漏れる。念話なので、その雰囲気だけだが。
(いいところで逃げられちゃったからね)
(“逃がした”の間違いだろう? ――まぁいい。それで、俺に東に行けと?)
(まぁそんなところ)
(具体的な場所は?)
(わからない。けど、ルーカスなら予測はつくんじゃないのかい?)
(お前は俺をなんだと思ってるんだ。そんな神がかった頭脳はねぇよ。――だがそうだな。“青龍”絡みかもな)
(僕もそう踏んでいる。何せ、あの朱雀の眷属が人間を乗せて向かうなんて、単なるおつかいの筈がない)
皆も同じ考えなのか、異論は出ない。
(その前提で話を進めると、アレンは既に朱雀と接触している)
(朱雀の眷属が、朱雀の指示なしに勝手に行動は取らないだろうってことか?)
(そういうこと。なら、その“指示”は何か? そして、向かう先は東。これらを併せて考えると――)
(青龍をさらった集団を追っている?)
(うん。僕も刹那と同じことを考えた訳だ。アレンの言う“とある集団”は、今回の騒動の主犯――“青龍をさらった奴ら”だと)
(しかし、聖域は既に調べたが、後を追える手掛かりなんてなかったぞ?)
(アレン達だけが知っている情報があるとすれば? ルーカス、前に君は言ったね? 青龍の聖域で調査をしていたら、“朱雀に襲われた”と)
(――っ!! そうか、そうだった!)
(? どういうこと?)
(つまりだ。前に朱雀も調査で、自ら青龍の聖域に来ていた訳だ。そんな朱雀が、既に自分が調べた場所にアレン達を向かわせる理由はなんだと思う?)
(彼らが自分に無い調査能力を持っているか。――それとも、別の心当たりがあるか)
(ご名答。なら、彼らの後をつければ、真相に近づくかもしれないじゃないか)
『おお!』と念話でガイルとクレハから感嘆の声が上がる。他の皆は、すぐそこに思い当たったようだ。
(隼斗。あいつの向かった方角を教えろ。すぐに向かう)
(ああ、もちろん。――みんなは、その場で待機ね。この間にも妖獣達が襲ってこないとも限らないから)
皆から了解の返事が返ってくる。
こうして、ルーカスがアレン――今は神楽だが――を追うこととなった。




