【第三部】第四十五章 情報伝達
――東の森――
「琥珀、悪かったな。助かったよ」
「お安い御用にゃ♪」
「我が君が捕らわれたと聞いた時は流石に焦ったのじゃ……」
「危なかったでありんすよ」
神楽は琥珀に抱き抱えられたまま、皆が待つ東の森に向かった。森に入ると皆に出迎えられる。
朱雀の眷属は後からちゃっかりと合流した。置いていって申し訳ないと謝るとともに、後をつけられてないか様子を窺うが、追っ手の気配はない。向こうには気配を消せるという隼斗がいるので油断はならず、警戒は怠らないようにする。
「とにかく、みんな無事にここまで来れて何よりだ。追っ手が来ても面倒だ。早速山の麓の洞窟に向かおうか」
神楽達は、シーラー達が消えたという洞窟目指して更に東進するのだった。
◆
――東都“宵の明星”ギルドホーム――
隼斗とクレハはギルドメンバーと<念話>をしていた。
(なんだよ。今、忙しいんだが)
(まぁまぁ。取って置きの話があるんだ。特に君にとってのね)
(もったいぶらずにさっさと話せ)
ルーカス、刹那、ヴィクトリア、ガイル達ギルド主要メンバーを繋いでの念話だった。
(妖獣に乗って通り過ぎた人間のこと?)
(そうよ刹那! あいつったら生意気なの!)
(僕から説明するよ。――ルーカス。“カグラ”か“アレン”って名前に聞き覚えはない?)
(“カグラ”は知らないが、“アレン”は知ってるぞ。……まさか?)
(話が早くて助かるよ。そう。そのアレンっていう少年が、妖獣達に乗って人界上空を通りすぎていった集団のリーダー格みたいなんだ)
隼斗は念話でも皆が興味を持つ気配を感じた。ルーカスに続きを促されたので話を続ける。
(ずいぶん優秀だったよ。クレハと互角にやり合うなんて)
(互角じゃないわよ! ハヤト! 私を怒らせたいの!?)
(落ち着きなさいクレハ。マスターから見て互角だったのでしょう?)
(あいつが?)
(ルーカスの“拾い子”じゃないのかい? 実力も知ってたんじゃないの?)
(いや、そうなんだが……。――ただ、あいつは戦闘センスはあったけど、“チビスケ”と互角な程の突出した力なんて無かったんだがな。武技練度はせいぜい“B”、魔法なんかは“E”だったはずだ)
(そんなのと互角って、クレハも油断しすぎだろ)
(黙りなさいガイル! ――それと髭親父! “チビスケ”ゆーな!!)
神楽――ここではアレン――の話で“宵の明星”のメンバーが盛り上がる。
(ふーん。じゃあ、ルーカスと別れてから力をつけたのかな? 一応、エクスプローラーの記録簿を調べたんだけど、リムンのエクスプローラー養成学校を“飛び級で卒業”したらしいんだよね。しかも、過去に類を見ない程の最高成績で)
(あいつ、もう卒業したのか? 飛び級で? 嘘だろ?)
(君が学校に預けたんだろ? 知らなかったのかい?)
(ああ。あいつには平和に生きて欲しくて学校に預けたんだ。今もぬくぬく学生をやってて欲しかったんだが……。――っと、今はどうでもいい話だな)
(珍しいな。ルーカスが子供を持つなんて。すっかり父親じゃねぇか?)
(うるせー。そんなことより隼斗、本題を話せ)
<念話>でもわかる。珍しくルーカスが自分のことを饒舌に話しており、スゴく楽しそうだった。それ程、アレンという少年はルーカスにとって大事な家族なんだろう。
隼斗はそれを嬉しく思いながら、ルーカスに言われるまま、話を本題に移らせる。
(そのアレン達の目的が気になってね。それを今から話すよ)




