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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第三部 “中つ国動乱”編
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【第三部】第四十二章 快適、時々、“薔薇乙女”

――東都(ドンドゥー)・守護長城上――



(央都(ヤンドゥー)に向かわず、こっちに来てる? 刹那(セツナ)、それは確かなのか?)

(間違いない。西都(シードゥー)近くを通った後は、まっすぐそちらに向かってる)


 隼斗は刹那との<念話>で、人間を乗せた朱雀の眷属達が西から東にまっすぐ突っ切ってきていることを知る。


 刹那とそのグループメンバー四人は、連携して朱雀の眷属達の後を追い、逐次隼斗に報告していた。


 隼斗が(あご)に手を当て考え込む。


(目的は何だ? 央都ではなく、こっち? 遠回りをしたくないから人界を突っ切ってるだけ? ――この、戦争が始まるかどうかで人界が緊張している時に?)


 てっきり央都へ向かうと思っていただけに、予想外の行動に戸惑ってしまう。隼斗はガシガシと頭をかいた。


「まぁ、向こうから来てくれるんだから、手間が省けてよかった……かな? クレハがやり過ぎないよう、見張ってないとなぁ……」


 隼斗は一人、守護長城の上で独りごちるのだった。


――人界・守護長城内地・上空――



「稲姫、見てみろよ。花畑があるぞ? あっちは放牧地だ」

「ふわぁ……ほんとでありんすね。キレイでありんす!」


 西の守護長城を通りすぎてからは快適な空の旅だった。いきなりの事態で向こうも態勢が整っていないのだろう。特に追っ手もなかった。


 神楽は上空からのキレイな景色を堪能(たんのう)していた。神楽にしがみついてぷるぷる震えていた稲姫も少し慣れてきたのか、景色を見て喜ぶ余裕も出てきた。


 他の皆の様子を見てみると、同じように空の旅を満喫していた。――琥珀はどんな神経をしているのか、仰向けに寝ている。アレ、本当に落ちないか心配なんだが……。

 

 ふと気配を感じてそちらを見ると、青姫がピノを連れて神楽達の方に飛んできた。二人は自前の羽で飛んでいる。スゴく便利そうでうらやましい限りだ。



「我が君。そろそろ東の守護長城にさしかかるぞ」

「そうか。なら予定通り、都を避けて少し南側を通過しよう。青姫、先導を頼めるか?」

「お安い御用じゃ」


 青姫はピノを連れて先頭に移動した。ピノは終始楽しそうで、すっかり青姫がお気に入りになったようだ。青姫も妹が出来たみたいに可愛がっている。うん、仲良きことは美しきかな。


 そんな快適な空の旅が、予期せぬ闖入者(ちんにゅうしゃ)によって破られた。



「――っ! みんな!! 左だ!!」


 神楽が大声で叫ぶと同時、皆を包むように広域展開している<結界>を衝撃が襲った。


「アハハハハッ!! すっごぉ~い! ねぇ、それどうやったの!?」


 声のした方――攻撃が放たれた左方を見ると、黒を基調としたドレス――フリルをふんだんに付けている――に身を包んだ少女が宙に浮かんでいた。手には身の丈に合わない程大きな漆黒の大鎌が握られている。


 神楽はすぐさま皆に指示を飛ばした。


「みんなはこのまま真っ直ぐ突っ切れ! 殿(しんがり)は俺が!」

「神楽! そいつはマズい! 初めて見るが、“宵の明星”の“薔薇乙女(ローズメイデン)”かもしれねぇ!!」

「……風貌(ふうぼう)一致」

「まずは会話を試みましょう。僕らは――」


 “宵の明星”というと、ルーカスと同じ“ブラック”クラスのギルドだったか。エクスプローラーのトップクラスの先輩にこんなところで会うとは……。


 でも、問答無用で攻撃をしかけてきたことを考えると、危ない人なのかもしれない。――というか、既に危なかったしな!


 エーリッヒが少女に会話を試みる。だが――



「危ないっ!!」


 少女が大鎌を振り、そこから放たれた黒い斬撃波が襲い掛かってきた。神楽は結界にさらに力を込め、()()これを防いだ。


「<結界>? それ、どんな魔法? 君、面白いねぇ。もっと色々見せてよ!!」

「みんなは先に! 話は通じない! 俺も適当に相手をしたらすぐそっちに行きますから!!」

「ご主人! うちもやるにゃ!」

「空中戦は向いてないだろ! ――それと、青姫はみんなを先導してやってくれ! あ、それと稲姫を頼む。さすがに落ちるかもしれないから」

「承知じゃ! 我が君、絶対無事に帰ってくるのじゃぞ!! ――ほれ稲姫。しっかりつかまるのじゃぞ?」

「ぜ、絶対に落とさないで欲しゅうござりんす……」


 青姫は稲姫を抱き抱え、皆を連れて先に行く。琥珀も渋々ながら従ってくれた。


 これで、この場に残ったのは神楽と、神楽が乗る朱雀の眷属だけとなった。


「アレアレ? いいのかな? 一人で勝つつもり?」

殿(しんがり)だよ。止められたらそれでいい。いきなり襲ってくるなんて何考え――」

「それじゃ、いっきま~す!♪」



 やはり話は通じなかった。少女はご機嫌に、大鎌で神楽に斬り掛かってくるのだった。



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