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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第三部 “中つ国動乱”編
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【第三部】第四十一章 守護長城の通過

――人界・西都(シードゥー)付近・守護長城上――



「何だアレ?」

「あ、あれは朱雀の眷属じゃないのか!? 警鐘を鳴らせ!」


 西の要所――“西都”に近い“守護長城”の城壁上で、見張りの兵が西からの飛来物――いや、朱雀の眷属と思われる大きな鳥達を発見した。小さいのも隣に数体飛んでいる。


 敵の奇襲と考えた見張りが急ぎ警鐘を鳴らし、周りに知らせた。続々と弓兵が集まってくる。


 弓兵達が(つる)を引き絞り、標的に向け矢を射ろうと狙いを定める。しかし、弓兵の一人は弓を下げ、自分の目元を手で擦った。


「――俺、どうかしてるのかな? “人が見える”」

「はぁ!? そんなこと言ってる場合か。――って、マジかよ!?」


 そう。大きな鳥達の背には、どう見ても人間らしき物体が乗っていた。こちらを気にした風もなく、鳥達は守護長城の上を通り過ぎていく。


「何を呆けている! 侵入されたぞ! 急ぎ<念話>を使える奴に伝えて、“央都(ヤンドゥー)”や他の都にも伝えろ!」

「は、ハッ! 承知しました!」

「直ちに!」


 見張りの兵士達は弓を背に戻し、詰所に走って行った。


――上空にて――



「あ~……。時短で突っ切ったのはマズかったかな、やっぱ」

「仕方無かろう。“守護長城”を避けて通るのは大幅なタイムロスになるしのぅ」

「高度をとって結界を張ってれば、とりあえずは何とかなりそうだな」


 怖いのはやはり弓などの遠距離攻撃だが、神楽は常に広域の<結界>を張っている。一般兵の攻撃くらいじゃビクともしない自負がある。そんな自信もあって、都の直上は避けつつも、人界の上空を突破しているのだった。


――東都(ドンドゥー)・ギルド“宵の明星”中つ国拠点――



「ハヤト! 面白いことになってきたね!」

「いや、面白がっちゃダメだよクレハ。とうとう妖獣達の侵攻が始まったのかもしれないんだから」


 ブラッククラスギルド“宵の明星”の“中つ国”拠点。妖獣との戦争に備え、メンバーは既に四方に散らばっていた。


 今は、ここ東都の守りを任されているクレハと、手の足りない戦線への応援待機戦力として、ギルドマスターの隼斗(ハヤト)が拠点のロビーに控えていた。


 控えていたと言えば聞こえはいいが、クレハはいつも通り、お菓子を食べたり雑誌を読んだりしてくつろいでいるだけだ。戦準備や雑用は、リリカを含めたグループのメンバー三人に押し付けてある。


 クレハの自由奔放さは今に始まったことでもないので、誰からも文句が出ていないのも悲しいことではある。


 隼斗やヴィクトリアは過去に何度か注意はしたが、リリカ達の方から「いえ、この方がやりやすいので、今のままでいいです」と断ってきた。


 そう言われるとどうしようもなく、今の状態に至る。なまじ、クレハの実力が高すぎるために女王様――いや、ワガママ王女様みたいに扱われているのは必然だったのだろうか。


 そんな余談はさておき、たった今、西都(シードゥー)に詰めている刹那(セツナ)から緊急の念話が入ったのだった。



『朱雀の眷属達が、人間達を乗せて西の守護長城上空を東に向けて通過していった』


 それを刹那から聞いた隼斗は考え込み、クレハは楽しそうに笑い飛ばした。


 妖獣だけで来たなら、戦争に関連した何らかの軍事行動という予測はつく。――だが、なぜ人間と一緒に? 特に、あの気性の荒い朱雀の眷属と一緒なんて、そんな人間がいるのか?


 いくら考えても答えは出ない。直接会って話してみるしかなさそうだ。隼斗は軽くこめかみを手でほぐしつつ、クレハに向き直った。


「もうすぐこっちにも来るかな!? 来たら倒してもいいよね?」

「ダメだよ。向こうから襲ってきたら仕方無いけど、こっちからは仕掛けず、足止めする。そして、訳を聞き出す。いいね?」

「じゃあさじゃあさ! 足止めのために攻撃するのはいいよね!?」

「……まぁ、向こうから侵入してきてるしね。そのくらいの覚悟はあるだろう。でも、なるべく牽制程度に――」

「うん、わかった! 行ってくるね!!」



 隼斗の言葉を最後まで聞かず、クレハがロビーを飛び出して行った。隼斗はため息をつきつつ、クレハの後を追ってロビーを出るのだった。



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